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第220号 「米地域電話会社も「光でIP放送サービス」に進出
[2005.01.18号]
1月半ば、古い知り合いにあった。彼は、通信セクションをいくつか転々として、今は「光」を売っているという。「最近は、FTTHが当たり前になって、電車の中の広告は、光一色といっても過言ではない。弊社のSOHOマンションにも、USENのチラシがたまに入ってくる。」そんなことから、久しぶりの話が始まった。
最近の彼は、マンションのデベロッパーやマンション専門の管理会社の方と打ち合わせをする機会がほとんどだという。デベロッパーは、新築物件や既存マンションの改修案件。管理会社は、既存マンションの改修等の打ち合わせ。
光は、インフラだから「大元」から話を進めないとどうにもならない。ある意味、マンションを建築・施工する側は、利権を持つ。「競争が激しいからたいへんでしょう?」というと、それが、もちろん競争は激しいのだが、詳しく話を聞いていくと、筆者が想像していたように、光のインフラはどこか1社に決められる、というわけではないようだ。つまり、マンションに引き込まれる光は1本だけということではないようなのだ。「多いところでは、4本くらい入っているところがある」という。「NTTに、KDDIに、TEPCOに、USENに、それにケーブルテレビもありますよね」と尋ねると、そのうちのいくつかが入っているのだそうである。
「過剰投資にならないんですか?」と畳み掛けると、「1つのマンションに4本も光のインフラが入っている国は、世界のどの国を見渡してみても日本だけ。この国は異常だ」という。
それは確かに異常だ。<マンションの分電盤や光を通す管路はどうするのだろう>と思って尋ねると、「分電盤などから棟内に入ることもあるが、3階くらいまでの低い階のお客さんには直接電柱のところから持っていてしまう」という。
電柱には、各社の光が載っているから、そこから加入したお客さんの部屋に直接光を引き込むことになるのだそうだ。
<う~ん。そういうやり方があるのか。ウチのSOHO事務所は、2階だから、そういうことも可能か。しかし、ここは分譲マンションだから、大家さんに許可を取らなければいけない。>彼に聞いてみると、分譲マンションは、やはりいろいろと細かいところに気を遣わなければいけないが、賃貸マンションは、どちらかといえばうるさくなく、引きやすいということだった。
とにかく関東、中部、関西あたりでは、光のホームパスが、増えているはずだから、どれくらいの「光ホームパス」を持っているのか尋ねると、「私の担当の関東1300万世帯で、まあ半分くらいは。目標は、やはり100万加入。」「その目標達成は、いつくらいにしているんですか?」と尋ねると、顔をしかめて、「それが問題なんですよね。いや、もっと問題なのは、今、カウントできているお客さんが、ずっとウチのお客さんでいてくれるかどうかが問題なんですよ」という。
先ほどの、「1つのマンションに光のインフラが何本も入っている環境だと、いつお客さんが他社に乗り換えてもおかしくない」のだそうだ。
例えば、『3ヶ月は無料』だとする。その期間使ってくれれば、違約金などはいらないとする。そうすると、そのお客さんは、3ヶ月経った時点で、他社に乗り換える可能性があるのだという。現実に、そういう事例は起きているようだ。無料期間が終わって、1ヶ月か2ヶ月使ってくれて他社に変わるのは、まだ良心的だという。少しでも売上になるから。
「『3杯までお酒無料。お通し、おつまみ1品つき』のお店に入って、3杯飲んだら、次の『無料』店に行ってしまうということですか?」と尋ねると、「まさしくその通りなんです」と。そしてさらに問題なのは、「『無料』にしないと売れない」ということだという。
<う~ん。普及し始めた「光」と思っていたが、いきなりもう「無料競争」に入ってしまっているのか?> ブロードバンドを使う人たち、特に「光」に飛びつくユーザーは、どちらかというとマニアックな方が多いだろう。そういう人たちは、非常にコスト意識に長けていて、かつ業界動向をよく知っているから、「無料店」を渡り歩くこともするだろう。
さらに、営業マンの中には、お客を転がす営業マンもいるのだそうだ。営業マンは、各社を転々とすることが多い。営業で回っているうちに一部のお客とはどうしても顔馴染になる。そうすると、お客の便宜を図って、こちらの方に今移ると無料期間がどれくらいあるし、サービスの特典もつく、ということで、自分が今売っている会社の方へ、お客をひっくり返す。そして、自らの営業成績も上がる、ということだ。
「企業の付き合いで、『A社のサービスから、B社のサービスに乗り換える』ということは、昔からよくある。しかし、これが個人の世界で今起きている。企業のブロードバンドユースは、どちらかというと使う量というのは、決まってきてしまう。しかし、個人は、これからの市場で、どれくらい使ってくれるか、どんなふうに使ってくれるか、まだまだ可能性を秘めた市場。でもそういう市場で、今起こっているのは、お客さんが転々とするという現実。しかも、無料で。事業者には、お金が入ってこない。自ずと体力勝負。誰が生き残るのかは、その時(最終的な勝負の時に)誰がどんな手を打つかで、変わってくる。しかし、生き残った人だけが、儲かる、というような市場でいいのだろうかと思う。やはり健全な光の市場を作っていかないと、いつまでも『無料』のお客さんの尻を追っかけているわけにはいかない。それは、わかっている。わかっているんだが、そうはいっても現状がそうだから、目先のことはやはりやらないといけない。」
「そういえば、先日、こんなことがあった。ウチは、J-COMに入っているんですが、子供がディズニーチャンネルをそれこそ朝から晩まで見ているので、さすがにこれはまずいだろう、ということで、ケーブルテレビをやめようかと妻と相談をしていた。その頃、ちょうどJ-COMからデジタルコースに変えませんか、と案内が来た。バンドルサービスもある。NTTの請求書、ネットの請求書、これまでのケーブルの請求書などを電卓に入れてみると、J-COMのバンドルサービスに乗り換えると、毎月2000円ほど安いことがわかった。これには妻の目が変わった」という。そして、彼は、J-COMのデジタルコースに乗り換えた。
ある休みの日、30代半ばのJ-COMの機器の設置担当者がやってきた。光を売っている彼は、当然、どのような工事をするのか興味がある。みていると非常に手際がよい。松下電器のSTBにケーブルモデムをつけて、稼動を確認し、丁寧な機器の使用説明をして、かかった時間は1時間半。非常に、テキパキとしている。
思わず彼は、「一軒いくらくらいなの?」と尋ねた。工事担当者は笑ってごまかそうとする。さらに彼は、「2万円くらいなの?」と水を向ける。工事担当者は、「今はそんなにもらえないですよ。ですから、数多く回らないと。特に、休みの日は、工事が集中するんで、次のお客さんがお待ちですので、今日はこれで失礼します。何かわからないことがありましたら、ご連絡ください」といって帰っていったという。
彼は、そこで考えた。<やはりバンドルサービスは、強い。ウチの妻も強いが、その妻もコロッといった。光を売るにしたって、やはり、既存のめったにやめないお客さんを抱えたケーブルテレビと組んで、ブロードバンドのところをサービスさせてもらうことはできないだろうか。
いくら「光の時代」といっても、放送もいきなり「光」へ飛ぶことはない。やはり「段々に」市場は形成される。映像は、やはり既存のケーブルテレビが強い。インターネットの高速性をケーブルのお客さんが求めるとしたら、そこのところはウチを使ってもらうという協働(コラボレーション)はできないものだろうか?>と。
というところで彼のケータイがなり、取材時間が終わった。「また今度夜に」という約束をして帰ってきた。わかったことは、以下の3つ。
1.光の「ホームパス」は確実に広がりつつある。
2.光の市場は健全な立ち上がりをみせているとはいえないところがある。
3.光を利用した放送サービスは、「段々に」普及する。
(伊澤 偉行)
【目次】
◆ 巻頭言 「『光』の表裏」
◆1. 米国の大手電話会社が再度ビデオサービスに挑戦
ファイバ・ネットワーク構築で、ビデオサービスは三度目の正直となるか?
◆2. MSOがCableHome居住者ゲートウェイRFPを発表
R&DグループもCableHome 1.1装置4機種、DOCSIS 2.0モデム2機種を認証
◆3. ケーブルのエンジニアがモバイル統合問題に取り組む
ハンドセット、シグナリング、サービス品質の課題をどのように乗り越えるか
◆4. 進むケーブルのCSデジタル放送サービスの提供(i-HITS利用)
〇㈱中国ケーブルビジョン・㈱ふれあいチャンネル
〇㈱インフォメーション・ネットワーク・コミュニティ、㈱上田ケーブルビジョン、㈱信州ケーブルテレビジョン、
須高ケーブルテレビ㈱が、4社広域統一プロモーションによるデジタル化
〇株式会社アドバンスコープ(三重県名張市)
◆5.1月17日、「J-COM オン・デマンド」東京エリアを皮切りにスタート
◆6.日本ケーブルテレビ連盟「違法チューナー対策室 活動状況」報告
◆7.<NHK放送研修センターからの研修会のお知らせ>
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