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第292号 「「包括的なユビキタスネット法制」の再設計へ舵切り」
[2008.01.15号]
昨年12月21日、慶應義塾大学三田キャンパス北ホールにおいて、2007年コンテンツ政策研究会総会が開催された。第1部では2007年のコンテンツ政策の振り返りを中心に、第2部では2007年に出版された『コンテンツ学』を中心にコンテンツ学の展望を、第3部ではコンテンツ分野の学会設立に向けた展望を会場とのインタラクションを交えながら議論が行われた。
総会では、会員アンケート結果より、2007年のコンテンツ政策重大ニュースが発表された。
以下に紹介。
1位:情報通信法論議 メディア融合に対応した、新しい通信放送法体系の構築
2位:動画共有サイトの拡大 ニコニコ動画の大ヒット、YouTube日本語版の公開、鍵は著作権処理
3位:地デジコピーワンスの見直し 「コピーテンス」による緩和の方向へ
4位:著作権保護期間延長問題 保護期間は50年か70年か、賛成派と反対派の論争続く
5位:「発掘!あるある大事典」事件 放送番組制作のあり方問い直される
6位:ネット上の3D空間の拡大 Second Lifeへの企業等の進出相次ぐ、米国では政策論議の
焦点にも
7位:インターネット中立性論議 インターネットの「オープン性」と「コスト負担の公平性」の両立
7位:モバイルビジネス環境の多様化 MVNO、WiMAX
9位:JAPAN国際コンテンツフィスティバルの開催 首都圏各会場にて総計80万人以上を動員
9位:情報通信省論議 メディア融合時代の行政組織のあり方とは
9位:コンテンツ取引市場 取引ルール、資産価値評価など検討続く
ちなみに、2006年の重大ニュースを紹介すると、以下のようであった。
1位 著作権論議の高まり IPマルチキャスト、コピーワンス、期間延長問題
2位 メディア融合政策の展開 竹中大臣懇談会、政府与党合意、骨太の方針
2位 Web2.0本格化 SNS、CGMのビジネスが本格化、ネット中立性の議論に発展
4位 欧米メディア業界の激動 Google-YouTube、CBSやNBCのネット戦略、FranceTelecomとFranceTVの提携など
5位 NHK改革論議 チャンネル削減、受信料、国際放送、アーカイブ開放
6位 モバイルビジネスの構造変化 新規参入、ワンセグ放送、MVNO、MNP
7位 レイヤ政策論議 法体系の見直し、ハードソフト分離論
7位 デジタル放送の苦しみ デジタルラジオ延期、地デジ格差問題、ワンセグ放送
9位 コンテンツ取引市場論議 取引市場、資産評価
10位 情報大航海 経済産業政策、国産検索エンジン
10位 日本ポップカルチャーへの期待高まる 欧米のブーム継続、外務大臣の積極姿勢
今年大きく議論が進展するのは、「新しい通信放送法体系の構築」に間違いはない。IPへと大きく舵が切られる。3月からIPでの地上デジタル放送の再送信が始められると、まず飛びつくマニア層が必ずいる。こういうアーリーアダプター層が、どのように評価するのか、というところが今から気になる。今は、ブログなどで、どんどん意見が言われる時代だから、いい意見も注文もどんどん出て来るだろう。映画館の初日から1週間くらいの興行収入でその映画の価値が判断されるように、最初の意見で、一波かぶるだろう。それをクリアして、どんな客層を掴んでいくのか。
多チャンネルは、もう当たり前の時代に、何が新しいサービスとして出て来るのか。NHKのアーカイブスのVODは、2009年になる。2008年は、そうしたVODやチャッチアップTVなどの地ならしの時になるのか。
2006年のGoogle-YouTube、CBSやNBCのネット戦略、FranceTelecomとFranceTVの提携など、欧米のメディア業界の激動は、例によって黒船のように日本に訪れ、国際的な動きに対応するための法体系の見直しが行われ、インフラの整備にもますます拍車がかかろうとしている。NTTのNGNと、いわゆるザ・インターネットがどのようにユーザーに受け入れられていくのか。こうした動きとともに、日本のコンテンツ産業の育成も本格的に行われようとしている。コンテンツ学会の設立に向けた動きもそのひとつであろう。
IPがらみの世界へとみんなシフトしていく。
時代時代によって投資が集まるマーケットは、砂漠の逃げ水のように移動する。(い)
【目次】
◆1.「第8回ブロードバンド特別講演会」講演抄録
『通信・放送の総合的な法体系に関する研究会』報告書について
総務省 情報通信政策局 通信・放送法制企画室長 内藤茂雄 氏
Ⅰ.ユビキタスネット社会に向けた情報通信インフラの高度化
Ⅱ.通信・放送の融合・連携
Ⅲ.融合・連携問題に対する欧米の状況
Ⅳ.通信・放送の総合的な法体系の検討
Ⅴ.最終報告書のポイント
◆2.Bフレッツで、IPv6映像視聴等機能を標準装備~Bフレッツ利用のユーザーは、
フレッツ・ドットネットの申し込みなしで映像サービス等が利用可能~
◆3.NTT Comグループが運営するTV向け映像配信事業を「ぷらら」に統合
◆4.セルDVD映像配信サービス「DVD Burning」における「TBS Drive」の販売開始~
◆5.今治市波方CATVと木曽広域連合が、JC-HITSサービスを利用開始
~設備投資・運用コストを最小限に抑え魅力あるフルデジタルサービス展開へ~
◆6.<年頭所感> 株式会社ジュピターテレコム 代表取締役社長森泉知行
◆7.<年頭所感> ソフトバンクグループ 代表 孫 正義
◆8.第37回番組技術展 ~ 放送現場の創意工夫から生まれた技術を紹介~
◆9.NHK放送研修センターセミナー
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