1. クリエイティブ・ビジネス・エージェンシーTOP > 
  2. cbaニュース > 
  3. 第300号 「デジタル・ビデオ&データ・デリバリービジネスの競争時代」

cbaニュース

第300号 「デジタル・ビデオ&データ・デリバリービジネスの競争時代」

[2008.05.22号]

 5月11日、日曜日。出先から3時半頃に戻り、伊藤園の水出し麦茶をグラスいっぱいに注ぎ、ゴクゴクと飲みながら、CSで楽天―ロッテの試合を見ていた。ちょうど、6―1でロッテが勝利を収め、試合後のヒーローインタビューも終わろうとしている頃、玄関のチャイムが鳴った。
 この時間帯は、新聞の勧誘であろうということは想像がついた。つい2、3日前も朝日新聞の勧誘のチラシがドアポストに入っていた。
「何でしょう?」というと、「読売新聞ですが…」という。
「新聞は、日経が入っていますからいいです」と答えると、「ハイ。同じ販売所から取っていただいているんですが、たいへん申し訳ないんですが、3カ月くらい、日経から読売にチェンジしていただけないでしょうか?」という。

<同じ販売所なのに、チェンジしちゃってもいいのかな~?>と思いつつ、「いいですから」と答える。何度か「お願いします」「いいです」を繰り返すうち、勧誘員は、「そこを何とか。自転車をつけますから…」という。
 いつもの勧誘員だと、わりと簡単に引き下がるが、意外に粘っこい。しかも、最後の「自転車」につい心を奪われてしまった。
「自転車」が、欲しかった訳ではない。
 新聞の勧誘なのに、「自転車を(インセンティブに)つけますから」という人の顔を見てみたくなってしまったのである。ドアを開けると、40半ばくらいのあるケーブルテレビ局のお偉方に似た風貌の勧誘員であった。

「あっ。お休みのところすみません。私、目黒の方から来ておりまして…」と名詞を渡された。
「これ~、あの有名な『連』というヤツですか」(注:「連」は、読売新聞の特別拡販部隊のこと)
「ハイ。千葉は、読売の部数が落ちてまして、何とか挽回しないといけないもんですから。6ヶ月予約していただけると、自転車がついてきます」
(自転車でドアが開いたので、自転車を前面に押し出してくる)
「本当に、自転車なんかつけちゃうんですか?」
「ええ。つけちゃいますよ。他にも、いろいろありますけど。自転車がいいですか?」とチラシを見せる。なるほど確かにけっこうな商品が並んでいる。

<う~ん>と決断を渋っていると、
「3カ月でもいいんですけど、何とかお願いできませんでしょうか? (間) つけちゃいますよ、自転車!何とか契約を1件取らないと、帰れないもんですから……」
<本当に、まだ1件も取れていないんだろうか?午後から来たとしても、もうかれこれ3時間以上。うちに来るまでに、まだ1件も取れていないんだろうか? 考えてみれば、天気が良くて休日となれば、在宅率も低くなるし、在宅しているとしても、開けてくれる人も少ないだろう。「自転車」攻撃だって、自転車を持っている世帯には効かない。多くの世帯に自転車は普及しているから、何の武器にもならない。そうなると、何軒も何軒もピンポンの繰り返しを行なってきたことになる>

 玄関に積まれた日経新聞の1面の見出しにもだいぶ飽きてきていた。
<同じ販売所だったら、まあ、替えてもいいか。3ヶ月で自転車がついてくるとなると、ちょうど季節も良くなってきたし、検見川浜の海岸辺りを走れば、日頃の運動不足解消にもいいかもしれない>ということで、6月から8月までの3ヶ月間、読売新聞を取ることにした。
「日経よりも少し安くなります。今月はサービスで入れさせていただきます。自転車は、2週間くらいで届きますので…」と勧誘員はドアを閉めた。
 そして、隣のうちのピンポンを鳴らし、「読売新聞ですが…」「いりません」というお決まりのやり取りの後に、「自転車つけますけど~」と少し強気のセリフをはいていた。「けっこうです」と返って来ると、今度は、「じゃ、ビールはいかがですか~?」と新聞のセールスには思えない。
「ここは、だめか」とつぶやくと、勧誘員は、上の階へと階段を上っていった。

 20分ほどして、またピンポーンとなった。押し方から伝わる波動は、先ほどの勧誘員である。開けると、「先ほどはありがとうございました。実は、本部長に電話したら、自転車は6ヶ月じゃないと、ダメだということで、怒られちゃいまして。たいへん申し訳ないのですが、6ヶ月、なんとかお願いできませんでしょうか」
<エ~。話が違うじゃん。最初から、3ヶ月でつって、本部長に怒られたで6ヶ月に持っていくつまりだったんじゃないの~>

 勧誘員は、「他にも、つけますから」とまた新しいチラシを見せる。
 両手鍋と片手鍋のセットが目に入った。長年使った、両手鍋の取っ手が壊れてしまっていることを思い出した。
<まあ、いいか。最初から、意図的であったかどうかなんて疑ってみたところで、それは彼の胸の中にあることで、もし、意図的であったとしても、正直に「はい。意図的でした」というはずもない。もしかすると、そういう営業マニュアルがあるのかもしれない。そのマニュアルを手に入れれば、意図的であった、ということが証明できるが、しかし、いったい、だからどうだというのだ。それに、もしそういう営業マニュアルがあったとすれば、それをやらなければならない身もなかなかつらい。それより、目の前の勧誘員の人柄を信用できるかだ。
 とはいえ、どこまで信用できるかなんて、人間の限界を超えている。神様の「天の倉」に貯金をしたつもり>で、「わかりました。6ヶ月でいいですよ」と返事をした。
 両手鍋と片手鍋のセットを選んで、三文判を押すとうれしそうに帰っていった。

 18時。また、ピンポーンと鳴った。また、さっきの彼である。わかってはいるが、「何でしょう?」といつもの問い掛けをすると、「先ほどの読売新聞のものですが~」という。
 ドアを開けると、「販売所に鍋がありましたので、持って来ました」と、先ほど選んだ2番目のインセンティブの品物を手渡すと、深々と丁寧なお辞儀をして、「ありがとうございました」と帰っていった。

 5月17日。朝9時半。ピンポーンとなった。自転車だった。2週間ほどといっていたが、1週間で届いた。
 あとにしようかとも思ったが、<どうせいつかはやらなければならない>と荷を解いて、90%出来上がっている自転車に、ハンドルとペダルを取り付けて、自転車を完成させた。

 管理人事務所に行って、自転車置き場の申し込みをし、近くのスーパーイズミヤの自転車売場で、登録を済ませた。
 そして、海に向かって、自転車をこぎだした。

 天気も良く、徒歩の散歩と違って、スピード感があるから、いつもの風景も何か違ってみえる。高さの違いだろう。いつもより、高い目線になっている。

 検見川浜からいなげの浜あたりの公園では、言葉が出てこないのだが、3~4人でチームを組んで、隠されたいくつかのポイントを探しながら回るイベントが行なわれており、老若男女のグループがあちこちを歩き回っていた。

 海には、多数のボートが漕ぎ出して、白い帆を波に揺らせていた。

 平和な日差しが、奇跡のように思えてきた。(い)


【目次】

◆0.[cba ニュース300 号発行にあたって]
◆1.ビデオ&データ・デリバリービジネスのマルチサービスプロバイダー(MSP)競争
 1 ビデオ&データ・デリバリー・ビジネスが生み出す“情報ビックバン”
 (1)ビデオ&データ・デリバリー・ビジネスとは
    ○現実になるD-CBA時代
    ○ビデオ&データ・デリバリー・ビジネスの考え方
    ○コンテンツを主軸にビジネスが回転し始めた米国
    ○ビデオ&データ・デリバリー・ビジネスの構成要素
 (2)情報を基軸にした産業構造の大変革“情報ビックバン”
    ○グローバルな市場展開が想定されるビデオ&データ・デリバリー・ビジネス
    ○ビデオ&データ・デリバリー・ビジネスの覇権争いが激化
    ○企業アライアンスでビデオ&データ・デリバリー・ビジネスの生き残り戦略
    ○デジタル衛星放送は実は巨大なコンピューター課金ネットワークである

◆2.須高ケーブルテレビがICT デジタルワークショップ開催
◆3.東海7 社、ケーブルテレビ事業連合の設立に合意
◆4.メディアッティが、緊急地震速報の商用サービス開始
◆5.メディアッティが、横浜テレビ局の経営権を取得
◆6.アットネットホーム、JWAY とインターネット回線運用サービスで提携

◆7.HD 対応版コミネットサービスをスタート!~新端末「COSMO5000」をリリース~
◆8.USEN とYahoo! JAPAN、新動画配信サイト「Video Complex」で提携
◆9.eoポータルサイトで健康情報を提供する「eo健康」の新規開設
◆10.フジテレビによるオンデマンド動画配信サービス
      「フジテレビOn Demand」がPC 向け自社配信を開始
◆11.KDDI、セルDVD 映像配信サービス「DVD Burning」のDVD レコーダー対応
    ~東芝製ハードディスク&DVD レコーダー「ヴァルディア」への対応~
◆12.NTT とKT が共同で「NTT-KT ベンチャーフォーラム(仮称)」を開催
◆13.「goo ニュース」、30 代男性がターゲットのコンテンツ「ボクナリ(ベータ版)」を提供開始
    ~「30 代男性による30 代男性のためのメディア」をコンセプトに、
            ライフスタイルに関するオリジナルコンテンツを多数紹介~
      「gooニュース」URL:http://news.goo.ne.jp/
◆14.「goo ホーム」に、携帯電話から手軽にコミュニケーションが可能な機能を追加
◆15.映像配信サービス「ひかりTV」で地上デジタル放送IP 再送信を開始
◆16.第19 回電波技術協会セミナー「電波技術で築く豊かな社会」
◆17.NHK 放送研修センターセミナー案内

cbaニュース一覧

有限会社
クリエイティブ・ビジネス・エージェンシー

〒261-0012
千葉県千葉市美浜区磯辺5-12-2-303


cbaニュースのご購読の申し込みは、電話かFAX、メールにてお願いいたします。 (担当:伊澤)

TOPcbaニュース視察ツアーセミナー・研究会出版物のご案内事業実績会社概要PHOTOSお知らせお問い合わせサイトマップ

Copyright (C) Creative Business Agency