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第318・319合併号「ケーブルプラス電話「加入者間通話」無料時代に突入」

[2009.03.07号]

 2月26日、CNC(ケーブルネットワーク千葉)に行く用事があって、検見川浜駅から京葉線に乗り、蘇我に向かって2駅目の千葉みなとで降りた。千葉みなとは、その名の通り、港の町で、仕事部屋に籠っていると、深い夜などには、船の汽笛が風に運ばれて、聞こえてくることがある。千葉市役所、千葉銀行本店、NTTなどが、駅の北側に集まっている。
 雨がポツリポツリと落ちてきたので、タクシーに乗ることにした。問屋町のシーオービルというと、「あの~、ケーブルテレビが入っているビルでいいんですよね」という。
「ああ、そうそう。そのケーブルテレビに行くんです」という。ここまでは、よくある会話である。
 しかし、60半ばの運転手さん、ここからが違った。いきなり、「あの~、地デジをみるのには、ケーブルテレビでもやっぱり、3、4千円かかるんですかね~?」と尋ねてきた。
『これから先、地デジ普及のためには声掛け運動が大切』といいまわっている筆者に、いきなり向こうから尋ねてきてくれるのだから、カモネギみたいなものである。
〈CNCは、地デジのみのサービスは、やっているのかな。聞いてみないとわからないな。たしか、デジタルの初級コースでもやはり、4千円くらいはかかるはずだが〉と頭の中で確認して、「そうですね。それくらいかかりますね」と答える。
「やっぱり、それくらい、かかるんですよね」と〈なかなか手が届かないな〉といった感じ。
「私は、パソコンはやらないから、テレビだけでいいんですよね。あの~、NTTのなんとかっていうのもアンテナがなくてみられるって、宣伝してますよね。6百~、630円くらいでしたっけ。あれは、あれでしょ。パソコンをやらなきゃいけないんですよね。パソコンの方が、あれも5千円くらいかかるんですよね。その他に、630円ですよね。アンテナでみるのも、あれもアンテナ工事代が、7、8万するんですよね。〈ほぉ~、5万円くらいかと思っていたら、もうすでにそのくらいまで高くなっているのか。まあ、条件にもよるが……〉
 その他に、テレビを買わなくちゃいけないんでしょ。何でも~、何か難しい時代になっちゃったよね」という。
〈この人、やたら、詳しいけど、タクシーの客待ち時間に地デジのパンフレットを何回か読んで、客との会話の材料の一つにしてしまったのではないだろうか〉などと思う。そうすると、地デジ普及のためではないかもしれないが、立派な「地デジの声掛けオジサン」である。人間、あることに関して、別々のところから3回くらい話を聞くと、「そろそろそういう時代か」とか「そろそろ、ウチも(俺も、私も)買った方がいいかな」などと思い始める。それの、切っ掛けづくりが、いろいろな媒体を使っての広告になるわけだが。

 運転手さんのネタが一区切りついたところで、今度は、こちらが突っ込む番である。
「運転手さんのところは、一戸建てなんですか?」
「いやいや、俺んところは、古い集合住宅だヨ」
「それなら、ケーブルテレビが来ていたりするんじゃないんですか」(すでにアナログの再送信を見ていたり、地デジの再送信も行われているが、気がついていないこともある)
「いや、とにかく古いから来ていない」〈そうすると、NTTの光も来ていないのだろうか〉
「それじゃあ、まず、管理組合とかに相談してみるのが、いんじゃないんですかね。『ウチの団地は、地デジ対応どうするんだ』って。けっこう、話が進んでいるかもしれませんよ。お住まいは、どこらへんなんですか」
「○×町」と答えが返ってきたが、千葉市内で飲むことはあまりないので、町名をいわれてもピンと来ない。

 団地の名前まで聞くのも、これもちょっと立ち入りすぎだ。〈そうだ。CNCのパンフレットをもらってきてあげよう〉と思って、タクシーを待たせて、品物を届け、CNCのパンフレットをもらって車に戻った。運転手さんは、早く駅に戻って次の客を取ろうと思ってか、帰りは話はせずに、スイスイと車を走らせ、駅まで戻る。お金を払い、「これ、パンフレットもらってきましたから、どうぞ」といって、渡すと、「ああ」といって、車のドアを開けてくれた。もう何度も見たことのあるパンフレットなのかもしれない。

 検見川浜駅を根城にする仲の良い運転手さんがいて、その日の売り上げなど、ぶしつけなことを聞いたことがあるが、「俺ひとりが食っていくのがやっと」という。しかもそういう時代がずっと続いているという。
 まあ、マーケットを考えれば、長距離が出るわけではないし、近くのワンメーターちょっとを繰り返してなんぼの商売だから、その日の売り上げ、毎月の売り上げも自ずと決まってくる。
 失礼な言い方かもしれないが、「多チャンネルにはそれほど興味はない。パソコンでインターネットをやるつもりはない。ただ、地デジに替えなければ、テレビが見られなくなるというし、何とかしなければいけない」と思っている方には、ケーブルテレビにしても、フレッツテレビにしても、アンテナ視聴にしても、地デジ移行は、高いコストだ。先行き年金だって、よくわからないし、あまり無駄なお金は遣いたくないというのが人情だ。

 そうなると、ケーブルテレビの「地デジ再送信のみのコース」を設けて、施設の利用料という形で、コスト負担をしてもらうのが一番リーズナブルかもしれない。
 ケーブルテレビ事業者によって、条件が違うから、さまざまな言い分もあろうが、前年の地デジ普及のための中間答申では、「デジアナ変換に向けての条件整備に関する課題の抽出」が明記されている。
 
 ということは、「やる方向で進む」ということで、今頃は、課題の抽出も終わっているだろう。

 全体の課題として、一番大きいのは、ケーブルテレビ接続世帯は、「デジアナ」で救済されるにしても、一戸建てで、アンテナ視聴している世帯は、アナログ停波とともに、テレビが見えなくなるということだ。これには、ライフラインとなっているテレビをそう簡単に見えなくしていいのか、という意見もある。一方で、すでにデジタル波は出ているし、それが国の政策とする意見もある。
 ここをどう救うのか。自力で移れる人には移ってもらうしかない。自力で、移行できない人をできるだけ少なく絞り込み、掛けるコスト(税金)をできるだけ抑えるしかない。

 ケーブルテレビにしても、同じ会社のサービスの中に、「デジタルコース」がいくつかあり、さらに新しく、でもいつかはやめる「デジアナコース」を設けるということになると、極端なことをいえば、「昨日、デジタルコースに入ったけれども、それほど望んで入ったわけではないのに、今日になったら、デジアナコースができたというのは、どういうこと?」ということで、文句が来るのは誰の目にも明らかだ。しかも、デジアナコースのために多少政府の補助金が出るかもしれないが、そうなると、加入者は、政府のお金、つまり我々の税金が投入されているのだから、デジアナコースはやめるな、というだろう。
 
 そのうちアナログテレビは壊れる。しかし、部品はないから修理はできない。一方で、年間1000万台くらいのテレビの自然買い替え需要はきちっと存在する。
 筆者のところだって、恥ずかしながら、多チャンネルを契約して、250GBのHDD内臓STBを設置して、しかもKDDIのVODにも入り、もちろん地デジもみているが、テレビはまだアナログのブラウン管だ。シャープ製のテレビデオがなかなか壊れない。いいことなのか、悪いことなのか。
 
 ということでいえば、総務省を中心に、「地デジ再送信のみのコースを行っているケーブルテレビ局もあるが、さらに多くのケーブルテレビ局で地デジ再送信のみのコースを行うべし」という流れの中で、来年には、「デジアナコースも設けるべし」というような要請がケーブルテレビにぶつけられると、これはたいへん困ったことになる。
 地デジ普及のアクセルをフルに踏みながら、一方で、ブレーキも踏めということになると、バランスが良ければ、不動の状態だろうが、バランスが崩れれば、回転を始めて大破である。
 現実的には、現場のスタッフがもたない。まず、コールセンターが客のクレームに答えられなくなるだろう。消費者センターにもクレームが殺到するのではないだろうか。

 ケーブルテレビ事業者は、二兎を追うものの喩えではないが、どちらかに絞るしかないのではないか。
 地デジのみのコースを積極的に展開しながら、その中で、多チャンネル加入のお客さんも拾い、とにかく「デジアナ」はやらない方向で、突っ走るしかない。
 地デジ移行世帯率を高くして、その上で、何らかの事由で、どうしても移行できない世帯に対する補助金や手当てを国や総務省、あるいは地元自治体に要求した方がいいのではないか。

 そろそろ定額給付金が出る。地元の電気商組合や量販店などと連携して、この冬思ったほど動かなかったテレビを売って、しかもケーブルテレビにも加入してもらい、地デジを見てもらう環境を整備するという作戦を実行してもいいのではないか。
 おそらくいろいろな業界が、定額給付金目当てのいろいろな作戦を練っているだろう。タンス預金にしてしまったら、本来の目的である景気浮揚につながらないから、それは当然だ。

 ケーブルテレビ事業者も、定額給付金は、違う世界の話と思わずに、さまざまな連携を行って、うまく地デジ移行に利用するべきだろうと思う。

 地デジのみのコースで、デジタルTVが購入したい世帯には、地域の量販店とケーブルテレビが連携して、「地デジ移行、テレビ買い替えキャンペーン」を行うとか、アナログTVが壊れていないので、という世帯には、それなりのボックスをつけて、地デジが見られるようにするとか。

 「デジアナ」は、やろうと思ったら、それなりにたいへんなことだ。設備投資から始まって、スタッフの手当てとか。だったら、どうにかして、地デジ率を高くする作戦を展開した方が、同じ苦労をするにしても、先にあるものが違うのではなかろうか。

 どうしても、「デジアナ」をやらなければいけないのだったら、チャンネルリースを行って、ケーブルテレビとは違う組織、 地元自治体などに行ってもらった方がよい。
地元自治体と、そこらへんの戦略をきちんと練りこんでおく必要がある。
 そうした2011年7月24日に向けた予算取りなども、今年で決まり。正念場の年である。(い)


【目次】

◆1.ケーブルプラス電話、8月より、加入者間通話が無料に
◆2.ケーブルテレビのマルチサービスプラットフォーム化(MSP)
◆3.都道府県単位で地上デジタル放送推進組織を整備
◆4.「デジタルテレビ放送に関する移行状況緊急調査(平成21年1月)」の結果
◆5.ジュピターテレコム、地上デジタル放送の啓発活動を強化
    「地デジ安心相談ダイヤル」を積極展開
◆6.ジャパン ケーブルキャスト、テレビ通販運営会社「良品プラス」設立
    ~地上波/BS の民放局で2 月25 日より放送開始、ケーブルテレビ局の
    ネットワークを活用した商品発掘~
◆7.日本デジタル配信、CS デジタルハイビジョン放送サービス
    合計25チャンネルに
◆8.日本デジタル配信、 4月1日より新たに13チャンネルを
    地上光伝送ネットワークで配信
◆9.JCN、VODで、第81回米国アカデミー賞受賞作品を提供開始
◆10.JCN、下り最大160Mbpsの超高速インターネットサービスを開始
◆11.多摩ケーブルネットワーク株式会社、KDDIとの提携により
    固定電話サービス開始
◆12.ROSENETに超高速インターネットサービス「プラチナ160メガ」登場
◆13.世田谷区役所に緊急地震速報サービス提供
    ~イッツコム初、行政施設の放送設備と連携した緊急地震速報サービス
◆14.横浜ケーブルビジョンが、子供向け防犯番組 DVD を市安全管理局、
    小学校に寄贈
◆15.須高ケーブルテレビ、L字システム 24 時間地域情報チャンネルリニューアル
◆16.須坂市内の災害時緊急避難所 15 箇所に放送通信回線を敷設
    デジタルテレビ放送に対応した災害支援情報端末を設置
◆17.鳥取県日吉津村でエリア限定ワンセグ放送の実証実験を実施
    ~中海テレビ放送、SCN、DXアンテナ、KDDIの4社が共同実験~
◆18.ケーブルテレビ山形とNTT東日本との協業について
    ~地域に根ざした放送・通信の新たな形態の実現に向けて~
◆19.IPTVサービスの高度化に向けた「ひかりTVラボ」の
    取り組みについて
◆20.アナログ放送が終了する2011年以降もアナログテレビを
    有効活用できる「デジタルアナログヘッドエンド」

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