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第327・328合併号 「ケーブルは「デジアナ変換」やるべきか、やらざるべきか」
[2009.08.11号]
都城を出て、しばらく青々とした田んぼが続くが、列車はほどなくしてまた深い山の中に吸い込まれる。改めて、都城盆地を意識させられる。この地域に、ラジオ放送やテレビ放送がやってきたのは、いつのことなのだろうと、思う。機会があったら、調べてみたいが、そう考えると、日本国中、あちこちに盆地があるわけで、目ぼしいところを拾っただけでも相当の数になるだろう。しかし、盆地に限らず、「ある地域に、いつラジオ放送がやってきて、どのように普及したのか、いつテレビ放送がやってきて、どのように普及したのか。そして、約50年後の現在、その地域で地上デジタル放送はどのようにして始まり、普及のために誰がどのような施策を行い、どのようにして普及し始めているのか、そしてその地域にどのような変化をもたらし始めているのか。ラジオ放送は、これからのデジタル放送時代にどのような生き残り策を見つけるのか」というようなテーマは、地域のメディアの変遷とその変遷が地域にどのような影響を与えたか、あるいは与えるのか、等に興味がある研究者にとってみれば、素材が全国にゴロゴロしている時代といってもよいのではないだろうか。過去の文献をあたるのは、研究者の常であろうが、そればかりでなく、自分の目で、目の前で起きている変化の事象を確認できるのであるから。(ただ、こうした好機に、筆者も含めて、全国を飛び回るだけの十分な資金がないのが情けない、という研究者の方も多かろうが……)
もちろん、それに、ケーブルテレビが絡んできて、さらにIP方式のケーブルテレビも絡んでくる。放送が、アナログからデジタルに変わるだけでなく、そこにIPプロトコルによる伝送方式が、新たな映像サービスを引き下げて、普及を目指そうとしている。一方で、RFとIPのハイブリッドの伝送方式も登場してきている。
最終的には、消費者の財布にやさしいサービスを提供したところに「ボリューム」が集まるのであろうが、そのサービス開発競争は、いってみれば終わりのない戦いで、まさに「常在戦場」だ。
従来型のケーブルテレビの接続世帯数は、2,300万世帯を超えたが、それは逆にいえば追われる立場であることを意味し、新しいモノやサービスに飛びつく傾向の高い日本の市場では、従来型のケーブルテレビは新たな脱皮を迫られているということにもなるだろう。
深い山々を抜けると、宮崎ケーブルテレビがサービスを提供する清武町のエリアが現れ、特急きりしまは、南国宮崎に到着する。あたりを眺めている暇もなく、南宮崎発大分行きの特急にちりんが反対側のホームに滑り込んでくる。宮崎からの乗客には、外国人の姿も散見される。
宮崎を出ると、右側の車窓には、日向灘が延々と続く。左側の車窓には、ケーブルの伝送路らしきものが見える。道路に立つ電柱が、列車の線路からやや遠めなので、いまいちはっきりしないが、その先の家屋にアンテナが見えなかったりするから、やっぱりケーブルの伝送路だろう。
日向市駅を過ぎたあたりからは、延岡のケーブルメディアワイワイのエリアとなる。ワイワイの最寄駅南延岡駅で降り、荷物をホテルに置いて、ワイワイに取材に出掛けた。そして、そのまま延岡の夜に飲み込まれた。
翌朝、南延岡駅までタクシーを飛ばして、昨日、降りた時から気になっていた駅前の八百屋さんをのぞいた。オジサンが、仕入れたばかりの野菜や果物、漬物などを並べていた。南国ならではの果物や新鮮な野菜、漬物など、あまりに安いので、あれもこれもと買い込み、背中のリュックサックは、ズシリと重くなった。どうも、近頃「安い」ということにことさら反応しやすくなっている。
漬物の製造元には、佐賀県の町の名前が書いてあった。前に一度、地元の漬物だと思って買った漬物が中国産だったことがあるから、漬物などの土産物は、製造元をしっかり確認することにしている。
〈このベテランの八百屋のオジサンが、わざわざ佐賀の漬物を仕入れるというのは、格別においしいということなのではなかろうか〉とオジサンのこだわりを信じて、いくつか買い込んだ。期待は外れなかった。
なにも南延岡の八百屋さんで、漬物を買うこともなかろうにと思われる方もおられようが、でもやっぱり、安くて、おいしそうで、しかも珍しいものには、どうしても手を出してしまうのである。
それから2時間後、大分の駅前でも、八百屋をのぞいてみた。おいしそうな果物があったが、どうもこれ以上買い込むと、かなりの重量になりそうなので、あきらめた。それより、夕べ遅かったので、だいぶ体が疲れている。大分ケーブルテレコムのアポの時間までには、2時間ほどがあった。
〈どこか、体を休ませるところはないだろうか。そうだ、癒しの空間はないだろうか〉と、汗だくだくで、パルコに入り、エスカレーターを上っていくと、3階に、ヒーリングスペースの案内スタンドがあった。割引券付のパンフレットを手にとって読むと、どうもマッサージとはいわないらしい。いくつか種類があって、ボディケアやリフレクソロジーなどのコースがある。
とにかく、横になりたいので、行ってみると、4台あるベッドには、1人が気持ち良さそうに寝そべっていた。受付にいた25、6歳くらいの細身で小柄な女性に申し込みをすると、最初に、椅子に座らせられ、今日の健康状態などをチェックされた。その後、コースの説明を受け、選択を行う。1時間といきたかったが、あとの時間が決まっているので、40分のボディケアのコースをお願いした。受付をした女性が、そのまま担当してくれた。彼女のフィーリングに包まれて、ヒーリングの時間は、あっという間に過ぎた。
申し込みの際に、千葉の住所を記入しているので、ほぼ一見だということははっきりしているわけだが、「BBAB(ブブアブ)というこのお店は、大阪に本社があり、西日本で営業展開しておりますので、また機会がありましたらご利用下さい」と丁寧に見送られた。
14時少し前。天気はますます快晴。ゴルフ日和だ。駅前からタクシーを飛ばして、大分テレコムのある郊外の小高い丘になっている松ヶ丘地区へ。土曜日だが、社員の半数近くが出社して、仕事をしている。
大分発16時14分の特急ソニックで、2時間ほどかけて博多に出て、福岡空港発19時45分の便で東京に戻るというスケジュールだったので、1時間ほど話を伺って、急いで駅に戻った。
その日は、本当に暑く、ホームのキオスクで、めったに買わないアイスクリームを物色し、ロッテの飲むアイスクリーム「クーリッシュバニラ」を買って、列車に乗り込み、海の見える右側の席に座った。
これから先、別府から、日出(ひじ)、杵築(きつき)、宇佐、中津を経て福岡県に入る。みんな豊の国ハイパーネットワークで繋がっている。宇佐市を除いて、それぞれ地元にはケーブルテレビがある。
列車は、別府湾を見渡すように海岸線を走り、日出駅あたりから海岸線を離れ、杵築駅あたりから山の中へと入り、国東(くにさき)半島の根本を横切る格好で、宇佐へと繋がる。
今回のケーブルテレビ取材と鉄道による九州一周の旅は、6月3日の夕方、博多から武雄に入り、4日午前が武雄のケーブルワン、夕方が熊本の熊本ケーブルネットワーク、5日夕方が延岡のケーブルメディアワイワイ、6日午後に大分の大分ケーブルテレコムと4局に伺うことができた。
ここから先は、2時間ほどかけて博多、そして空路、東京である。
〈それにしても、九州は広いな〉とボーっと車窓の緑に目をやっていると、白い服を身にまとった少女が池の中に腰まで浸かっている映像が飛び込んできた。
〈入水?〉と、慌てて深く座っていた腰を起こし、窓の外に目を凝らすと、池と思ったのは川であり、川に掛った欄干のない木の橋には、真ん中辺に、梯子が掛っていて、赤いシャツと白い半ズボンを履いた女の子が、その梯子を中程まで登っているところだった。
〈そうか。川の岸から、あまり深くないところまで泳いで行って、そこから先は、梯子を使って、橋の上に登るという仕組みになっているのか〉と気付いて安心した。慌ててカメラを手にして、後方に流れ行く映像に2度、3度とシャッターを切った。
その夜遅く、自宅に着いた。翌日、少女たちの映像が気になって、早々にカメラからパソコンに映像を取り込んだ。武雄、熊本、鹿児島、沿線の家々、延岡、大分の写真が次から次へと出てくる。
いよいよこの次あたりだ、と思ってマウスを動かすが、少女たちの姿はなく、福岡県の築城(ついき)の航空自衛隊基地のあたりで撮った映像にとんでいた。
シャッターを切ったつもりだったが、十分に押し切れていなかったのだろうか。あるいは、カメラがデータを把握しきれなかったのか。いずれにしろ、写真には収めることができなかった。
しかし、筆者の目には、はっきりとあの瞬間の数秒の映像が蘇る。
雨が上がり、梅雨明けした今頃は、多くの子供たちが、水遊びを楽しんでいることだろう。(い)
【目次】
◆1.接続2,300万世帯を超えたCATV業界の最新動向
―2009年7月28日開催のSSKセミナーより筆者講演を抄録
◆2.衛放協、多チャンネル放送研究所第1回発表会開催
◆3.テクノロジーネットワークス、「世界の子どもにワクチンを日本委員会」へ
ワクチン寄贈を実施
◆4.ベイ・コミュニケーションズ、KDDIとの協業によりVODサービス「BaycomVOD」を開始
◆5.豊橋ケーブルネットワーク、KDDIとの提携により固定電話サービス開始
◆6.JCN、この秋、チャンネルラインナップを一気に拡大!
~ベーシックチャンネルのハイビジョン化、新規チャンネルの追加~
◆7.『夏休みは世界の動物に会いに行こう!!~地球まるごと!テレビ動物園』
@NetHome・ZAQ 夏休みスペシャルコンテンツを公開!
◆8.東京都世田谷区の小・中学校95校に緊急地震速報サービスを提供開始
◆9.大分県デジタルネットワークセンターがJC-HITS 地上配信サービスを
利用したHD サービス開始を決定!
◆10.Interop Tokyo 等のイベント事業継承とナノオプト・グループにおける新戦略
◆11.世界のマーケット動向
①高解像度モデルが優勢になってきたHDDレコーダ市場
②3Gホームフェムトセルは、2014年に90億ドル以上のサービス収益
③世界のモバイルサービス収益は、2014年まで少なくとも年1.2%増加
④モバイル広告収益は、スマートフォン、データプラン、新しいアプリケーションに
よって2013年に15億ドルに成長
⑤PCのテレビチューナーの市場は新たな課題に直面
⑥絶好調のIPTVセットトップボックス市場は沈静化
◆12.NHK放送研修センター「ケーブルテレビ研修」案内
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