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第395号「オリンピックの「マイナースポーツ」は、タブレット視聴かも」
[2012.06.04号]
(前号からの続きで「静岡のおでん街」のお話)
もう9時半が近かった。しかし、「今の人は、なかなかの人物である」と二人で評しながら、4杯目のお酒を頼んでいた。最終は、10時24分である。その前が、10時10分。その前が、9時48分であるが、それにはもう間に合わない。
「これを(4杯目)飲んだら出ましょう」と、天野さんに誘いを掛けるが、どうも今夜の店が気に入ってしまったようで、腰が重たそうである。《仕方ない。10時になったら、一人でも出よう。東京に戻ろう。千葉に帰ろう》と思った。
ツルルと着信音がする。天野さんが、真新しいスマホを取り出して、応対する。「いま、静岡。ウン。ウン。ウン。じゃ、またね」と電話を切る。ずうずうしく、「誰から?」と聞いてみると、「飲み屋のねえちゃん」と答える。相変わらず、開拓精神は、衰えていないようだ。スマホが、だいぶ新しいので、「替えたんですか?」と聞くと、「替えたくはなかったが、NTTドコモのFOMAのサービスが終了するので、無料で、交換してくれた」のだとか。バッテリーがすぐになくなってしまうのに驚いていた。
いやな話だが、2015年3月末、ケーブルテレビのデジアナ変換サービスが終了する際に、その対価に、似たように、視聴者に何かを配って、「デジアナ変換サービスからデジタル放送サービスに乗り換えてもらう」必要が出て来るのかも知れない、と思った。それは、よくいわれる簡易型のSTBなのか。あるいは、いまさら簡易型のSTBでもないとすれば、何かのしばりをつけて、デジタルTVそのものなのか。しかし、そのうち、テレビも高度なインターネット対応をして、「スマート化」すれば、再び値段も上がるだろう。そのうち、STBがいらないデジタルTVも出て来るかもしれない。
デジタルTVの価格は、やはり、いまが底か。いずれにしろ、「デジアナ変換」視聴世帯の残数は、少なければ少ないほどいいから、今度のロンドンオリンピックを契機に、デジタルTVに買い替えてもらうよう、キャンペーンを張った方がいいだろう。そうしないと、後で、たいへんな目にあう。一般家庭で、日常享受されているサービスを新しいものに移行してもらうことは、とにかく手間暇が掛かる。デジアナ変換サービスは、何かの事由で、いまだデジタルに移行していない世帯であるから、2011年7月24日を着地点とした「デジタル移行」よりも、なおやっかいである。早め早めに取り組んで、とにかく数を減らさないといけない。
4杯目のお酒は、喉ごし良く、腹の中に収まった。天野さんが、5杯目のお酒を頼んで、「おまえは?」というので、「じゃあ、もう一杯」とグラスをママに差し出した。時計を見て、《もう一杯くらいは大丈夫かな》と思ったのである。これがいけなかった。筆者の腰も重くなり、10時が近づき、《ああ、もう帰らないと》とは思うのだが、椅子から立ち上がれない。《最悪ホテルもありか》という気持ちも浮かんでくる。《残して帰るのももったいない》などと、酔っぱらいの意地汚さも出て来る。
10時10分になり、《この重い荷物を持って、走るのは無理だ》とあきらめ、ホテルを探すことにした。ケータイではなくスマホを取り出し、静岡のホテルを検索する。何件かあることにはあるが、けっこういい値段である。
天野さんに、「ホテルはありますけど、けっこう高いですね」というと、「何で、ホテルを取るの~?」と返ってきた。
「どうするんですか?」と聞くと、「決まってるじゃ~ん。正しく朝まで飲めばいいんだよ」。
《えっ~!》とは、思ったが、決して冗談でいっているわけではないので、覚悟を決めた。
朝まで飲むということを耳にしたママは、「ねっ、あたしの知っている店、行こうよ」と誘いを掛けてくる。
天野さんは、開拓派なので、そういう誘いには乗らない。「いい。俺等は俺等で探す」と突っぱねる。ママは、「え~、面白いのになあ」とすねた『室井滋』の顔をする。「俺等、歌を歌うの」というと、「あたしも、行きたいなあ。ねっ、今日はお店もう閉めるからさ、あたしも連れてって~」と切り返す。「ダメ。ママは、しっかり商売しなさい」というと、「だって、もう終わりだもの」とすねた調子。そんな会話を繰り返しているうちに、もう11時になっていた。「あたし、知ってるお店、あるよ」とママも、相当乗り気になっている。このまま、ハシゴを外されたら、まっすぐ家に帰っても眠れない、という感じだ。
「わかった。じゃあ、俺等先にもう一軒行ってるから、かたづけたらあとでおいでよ」ということになって、筆者がママのケータイ番号を書いた紙切れを預かった。
交差点を渡って、タクシーの運転手が最初に案内した青葉おでん街に行って、また暖簾をのぞき込んで、店を物色し、いかにも老舗っぽいママがやっている店に入った。
11時10分。店を出て、さっきの千代咲のママのケータイに電話して、お店の場所をいうと、「11時半までには、行くから」ということだった。
千代咲のママ、幸子さんは、それから10分でやってきた。急いでかたづけたのだろう。
老舗のママにご挨拶をすると、奧に座った天野さんと筆者の間に座り、おでんを一串食べていた。
お酒もそうそうに、幸子ママが行ったことがあるという、青葉通りを渡った歌えるスナックに行くことになった。
そのお店のママは、ちびまるこちゃんが、そのまま歳を取ったような感じのママだった。
夜中の12時前から歌い始め、もう2時を回った頃だろうか、幸子ママが、トイレから慌てて出てきて、スナックのママに何かを話している。前に天野さんが入っていたので、《天野さんが、何か壊してしまったのかもしれない》と思い込んだ。筆者も、あるところで、酔って、よろけた弾みで、トイレのパイプを支えにつかんだところ、そのパイプが外れてしまって、水が噴き出し、水道屋さんを呼んだことがある。てっきり同じことが起こったのかと思い込んだ。これはたいへんなことになった、と思っていると、水道屋さんがやってきた。現場を見ると、裏の方に回り、水を止めたようだ。
そのうち、スナックのママがやってきた。「どうしたの?」と聞くと、「トイレが壊れた」という。「どうして壊れたの?」と尋ねると、「水道屋さんが、『外部からの強い力じゃないと壊れない』といっていた」という。水道屋さんのその言葉で、スナックのママの頭の中には、「この店の中にいる私以外の3人のうち誰かが、トイレが壊れたことに関与している。」という思いが広がったのだろう。続けざまに、「半分くらい持って欲しいわ~」というので、はずみで「いくら掛かるの?」と聞くと、「40万くらい掛かるっていってた。1週間くらいお店も休まないといけないし~」という。
《パイプを替えるのでそんなに掛かるのかな》とは思ったが、この段階では、天野さんには、たいへん申し訳ないが、《天野さんが何かやっちゃった》と思い込んでいた。筆者のパイプを壊した体験もあるが、これまでの長い付き合いの中で、お互い、叩けば埃の出る身であることも背景にある。
天野さんは、いつの間にか支払いを済ませたようで、「さあ、トイレも壊れたし、次の店に行くか。さあ、行くぞ」と立ち上がる。その言葉が、『トイレの破壊工作完了』という宣言のように響き、スナックのママのどんよりとした雰囲気が広がっていく。仕方なく、店を出ようとする天野さんに、「天野さん、トイレが壊れたことに関して、天野さんの関与が疑われているから、現場を見た方がいいですよ」というと、クルリと翻って、トイレをのぞきに行った。
筆者も、その後に続いて、現場をのぞいてみた。水はもちろん止まっていたが、底辺が1㎝、高さが3㎝くらいの二等辺三角形の破片が、トイレのドアの下にあり、その回りに小さな欠片も一つ、二つあったような感じだ。
てっきり壊れていると思ったパイプは壊れていなかった。《あれっ》と思った。
幸子ママに、「ママが入った時、トイレ壊れてた?」と尋ねると、「ううん。私が流したら、壊れた」という。スナックのママに、「彼の関与はないよね」と天野さんが関わってないことを理解させた。
スナックのママも「たしかに、ママが入っている時、大きな音がしたのよね」という。
幸子ママは、ふてくされた『室井滋』顔になって、「私の……は、そんなに強烈なの~!?」という。
スナックのママが、「困ったわ~。保険にも入っていないし」というと、幸子ママは、気を取り直したようで、「大丈夫。あたし、保険、入っているから」と笑顔を振りまいた。
ここで、天野さんは、「客が普通にトイレ使って、流して壊れたのは、店の責任。大家にいいなさい」とスナックのママにいい、幸子ママには、「あんたが保険に入ってたって、払う必要はないよ」といって、3人は、店を出た。
後ろを振り返ると、ちびまるこちゃん似のスナックのママが、見送っていたが、「あんたたちが来なかったら、トイレは壊れなかった」と思っているのではないかと思った。
店を出た3人は、まだ開いていた中華料理屋を探しだし、とりあえず紹興酒をボトルで頼んだ。
天野さんは、「だいたい、おまえが向こうのいうことに相手するからいけない」というので、「天野さんの後に入ったママが、あんまり慌ててトイレから駆けだしてくるもんだから、てっきり天野さんが、パイプか何かを壊しちゃってたのかと思って。ママが、用足しをして、流したら壊れたのね」と詫びた。
「水の圧力ってのはすごいんだよ~。現場見てないのに判断するからだよ」という。確かに、その通りである。
しかし、現場を見た水道屋は、どうして、「外部からの強い力」といったのだろうか。和式トイレの前の帽子のような部分にパイプが入り込んでいる辺りが破損し、底辺が1㎝、高さが3㎝くらいの二等辺三角形の破片がドア付近まで飛んでいる。外部からの破壊であったら、便器の前面に多数の破片が飛び散るはずである。しかも、外部から、パイプの一部に傷をつけるような破壊は、きわめて難しい。できるとしたら、パイプを大幅に破壊することである。
冷静に考えれば、パイプが老朽化し、腐食か何かで、亀裂が入っていたところに、圧力が掛かって、噴き出し、小さな破片をドアまで、飛ばした、ということだろう。たまたまそれが幸子ママの時だったということだ。
水道屋さんが、正しく現場を判断し、「内部の亀裂が原因」といってくれれば、あるいは、良くわからなければわからないで、「明日、ベテランを寄越します」とでもいって帰ってくれれば、スナックのママだって、客を疑わなくてすんだろうし、こちらもあらぬ疑いを掛けられずにすんだ。真夜中の2時過ぎであるから、水道屋さんも、ベテランを待機させているはずはない。アルバイトか、正社員にしてもそれほど経験のない方だろう。
しかし、「外部からの強い力が掛かって壊れた」という言葉は、『ここにいる3人の客のうちの誰かが、破壊した』といっているようなものである。はた迷惑な話である。どこでどんな災難に巻き込まれるかわからない。もっとも、一番驚いたのは、青葉おでん街の千代咲の幸子ママで、トイレの水を流したら、破片が飛んで、水が勢いよく噴き出してくるとは、想像だにしなかったろう。スナックのママには気の毒だが、トイレの壊れてしまった原因を正しく理解してくれることを祈るばかりだ。そのうち、幸子ママに電話を入れて、事の顛末を聞いてみることにする。(い)
【目次】
◆1.KDDIから、月額590円で映画が見放題! 新作映画も楽しめる「ビデオパス」新登場
~新作映画がレンタルDVDと同日解禁、バラエティ豊かなラインアップがマルチデバイスで
楽しめる~
◆2.J:COM、アスミック・エース、KDDI 初の三社共同オリジナルドラマ製作
「東野圭吾ドラマシリーズ「笑」」~テレビとスマホで楽しめる!~
◆3.ジャパン ケーブルキャスト、ハリウッドチャンネルと連携し、大分ケーブルテレコム向けに
PC/スマートフォン対応の月額固定VOD サービス提供開始
◆4.自治体向け防災行政無線に関するプラットフォームの提供について
~JCNのコミュニティチャンネルで防災行政無線の情報をデータ放送で表示~
◆5.JCNが「KDDIケータイ教室」に参加・協力
◆6. 社団法人日本CATV技術協会が、第45回通常総会開催、平成24年度CATV事業功労賞の
受賞者も決定
◆7.平成24年(第8回)「社団法人日本ケーブルテレビ連盟 功労者表彰」の受賞者決定
◆8.第24回 ケーブルテレビ功労者表彰の受賞者決定
◆9.~2007年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞 河営照・篤帖崙段鵡岷蕁・絮撚顱彝・ナ
~第38回 「日本ケーブルテレビ大賞」 番組アワード 入賞作品決定!!
6月14日(木)に贈賞式を開催
◆10.大手町サンケイプラザで『ケーブルコンベンション2012』開催。7月18日(水)~19日(木)
◆11.ボストン美術館日本美術の至宝展。関連アプリ「My雲龍図」、全国巡回展にて発売決定
◆12.世界の市場動向
(1)LTEは2016年までに5億9200万の加入者数に達するだろう
(2)2016年までに10億世帯がハイブリッドサービスを利用するだろう
(3)IPTVの成長がケーブルテレビや衛星放送を上回る
(4)タブレットPC使用を分ける主要な要因は画面サイズ
(5)タブレットはビジネス市場に拡大、電子メールと記録が最もよく利用される
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