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第396号 「”勝ち組”といわれる米国『ケーブルショー2012』開催」
[2012.06.18号]
5月21日から23日まで、米国ケーブル通信業界(NCTA)の年次大会である「THE CABLE SHOW」が、マサチューセッツ州の州都ボストンで開催された。ボストンで、同イベントが開催されるのは初めてということで、開会にあたり、州知事が挨拶に立った。今回のテーマは、「CABLE.IT’S MORE THAN TV.IT’S HOW WE CONNECT.」。『ケーブルは、テレビを超えて、絆を広げる』とでも意訳できようか。
昨年のテーマが、「EVERYTHING POSSIBLE」(ケーブルにできないことはなにもない)で、一昨年が、「GO BEYOND」(一歩先へ)であったので、積極果敢に「先んじて他を制す」ことに努め、その結果、新たな可能性を見いだし、遂に、リビングの中央に鎮座する大型テレビの概念を打ち破り、屋内外のさまざまな端末のディスプレイに映像配信を行えるようになったということだろう。
しかも、その『絆』を通して、視聴者が得られるコンテンツは、これまでの映画、ドラマ、アニメ、スポーツ、ドキュメンタリー、などなどの映像コンテンツはもちろんのこと、多種多様な「アプリケーション」もダウンロードして、体験することができるようになってきた。
さらに、手元のスマートフォンやタブレットを利用することにより、これまでの「リモコン」では、到底実現できなかった、多様なインタラクティブ機能の充実にも力が注がれている。タブレット端末に話し掛け、タブレットとワイヤレスでつながっている大型のテレビ画面を操作するというようなR&D展示も行われていた。マーケットニーズが高まれば、すぐにでも市場投入できる態勢も組まれているという。
「アメリカのケーブルは勝ち組である」とは、ある事情通の言葉である。ブロードバンド市場では、圧倒的優位を保っている。
1990年代前半に登場した空の競合事業者であるディレクTVやDishネットワークも多チャンネルサービスでは、多くの視聴者を獲得しているものの、ブロードバンド市場でのさまざまなアライアンス展開も、ケーブルの優位を脅かすまでには至っていないようである。また、2005年に登場した地上の競合事業者(FTTH)であるヴェライゾンが、クワドロプルプレイサービスを展開するが、その展開は、16州にとどまり、全米で事業を展開するケーブル業界に与える影響は限定的であるといえる。
前出の事情通は、「米国の国土が広いためにケーブル業界は助かっているところもある」という。大手通信事業者といえども、日本の国土の何倍もある全米に光ファイバーを敷設するだけの投資は集められないからである。これは、ヴェライゾンだけではなく、AT&Tにしても同様である。
3年前に、米国ケーブル業界の足元を揺るがす新サービスとして話題となり、日本からも注目を浴びた「OTT(オーバーザトップ)」も、ふたを開けてみれば、コードカッター(解約)はそれほど起こらず、むしろ『インターネットビデオ視聴もケーブルのブロードバンドサービスで』という流れになり、「win-winの関係」であるという。これをそのまま日本に当てはめるわけにはいかないが、そういう事実は、事実として認識しておく必要があるだろう。
しかし、日本でも、インターネットビデオ視聴の流れは、確実にやってくるだろう。
国内では、WOWOWが7月より、スマートフォンやタブレットで、映像視聴できるサービスを展開すると発表しているし、日本に進出したOTTサービスの「hulu」も同様のサービス展開に力を入れ始めている。
昨年春の日本の携帯電話市場では、「携帯電話の8割が3~5年でスマートフォンに替わるだろう」といわれていたが、昨年6月の「THE CABLE SHOW」を視察して、日本では、業界予測を上回るスピードで、スマートフォンが普及するのではないかと感じて帰国した。そして、それが、その通りになっていることは、回りを見れば、一目瞭然である。いまや、首都圏では、携帯電話を利用している人を探す方が難しい。そして、今年、「日本でも、タブレットが業界予測を超えて普及するのではないか」と強く感じて帰国したのである。何しろ、機械ものにうとい筆者でさえ、「欲しい」という思いがふつふつとわき上がってきているくらいである。
『市場に、一番多く出回っている端末を利用しないことには、ビジネスが成り立たない』のは、これは昔も今も、そして将来もかわらないだろう。そして、それがテレビの時代もあった、ということである。
テレビがなくなるわけではないが、日本のケーブル業界も、スマートフォンやタブレットとつながりを持ったサービス展開が欠かせなくなってきたことは事実であろう。
日本のケーブル市場では、その紐付けがいかに展開されるのか、それが今後の焦点となってこよう。(い)
【目次】
◆1.「ケーブルショー2012」フォトレポート
◆2.ICインサイツ社が、タブレット、ノートPC、PC全体の出荷数予測を上方修正
◆3.NHK放送研修センター《ケーブルテレビ研修》案内
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