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第238号 「双方向ネットメディアが片方向放送メディアを超える?!」
[2005.10.22号]
9月21日午後4時に、USEN本社に取材に行った。赤坂の山王パークタワー13Fの受付け前のロビーで担当者を待つ間に感じたのは、エレベーターを降りて、受付に来訪の趣旨を伝える男女、そしてその来訪者を迎える男女が若いということだ。部屋が一杯なのか、ロビーで打ち合わせする人も、そして、ロビー脇の打ち合わせルームから聞こえてくる声も若い。若くは見られても、実質年齢はもう50に近くなった身としては、ソファーに座っていても何か落ち着かない。いつも居酒屋で飲んでいるのに、その日に限って、若者の集まる洒落た店のドアを開けてしまって席に案内され、とりあえずビールとおつまみ一品くらいは注文しないといけない、とあせりまくるような心境だ。
しばらくして、受付けの女性に打ち合わせルームに案内され、窓から見下ろす風景に見入った。「すみません。お待たせして」と担当の岡根さんが現れ、パソコンをセッティングし、GyaOの先頭画面を出して、インタビューの準備が出来た。すでに登録はしているものの、まだあまりゆっくりGyaOを見ていないことを伝えると、こちらのいろいろな質問に丁寧に答えてくれた。
それから、1週間ほどして、いつもの近所の居酒屋で落ち着いて飲んでいると、メンバーのひとりが、「ウチのマンションの集会所で、今度の土日にUSENの説明会がある」という。職業柄、どんな説明をするのだろうと思い、一緒に参加させてくれ、と頼んだ。前に、筆者が住んでいるマンションにもUSENのチラシが入っていたことがあるが、「説明会」に至らずに霧散してしまったのと、USEN本社での取材後、日も経っていなかったので余計に興味があった。九州出張から帰った翌日の10月2日、友人Tのマンションの入り口で待ち合わせをして、一緒に説明を聞きにいった。説明会は、個別対応で行なわれていた。友人であることを伝え、イスを並べて話を聞いた。Tは、これまでパワードコムを利用しており、10月からパワードコムのサービスが、ドリームトレインインターネット(DTI)に統合され、8ヶ月間、割引サービスがあるので、DTIで継続しようか、それともUSENの光に乗り換えようか、選択に迫られていた。
説明は、極めてシンプルで、「マンションの入り口にMCを設置し、後は個別に端末を設置することで利用できる。インターネットのほかに、GATE01、ShowTimeのコンテンツも見られる」と、説明パンフをめくりながら話した。もうちょっと映像コンテンツの話を強力に押すのかと思ったが、期待はずれで、「コンテンツの話は別にチラシを作ってもっとアピールした方がいいんじゃないの」と思わず余計なことをいってしまった。もしかすると、売りの現場でコンテンツの話をしても、顧客ニーズを掘り起こすことができず、やはり光の100Mというのが一番成約に結びつくキーワードなのかもしれない。営業マンは、長年のセールス活動で、それがわかっているということだろう。しかし、説明の最後の方で、「将来的には、スカパー!が見られます」と言っていた。「千葉のUSENで衛星を受信して、再送信するのか」と尋ねると、東京の本社からネットで配信されるということだった。オプティキャストだろう。(その後、10月20日に明治記念館で行なわれたSSKセミナーで、講師のスカパー!の仁籐さんに、「千葉のUSENでも、スカパー!と地上デジタル放送の再送信が見られるようになるのですか」と質問すると、「もうすぐ見られるようになるだろう」ということだった。)
USENの説明は、20分ほどで終わった。筆者のマンションについて聞くと、「前にお話をしてはいると思いますが…」と言葉を濁した。まあ、理事会が動かないのかもしれない。昨年5月に、ケーブルネットワーク千葉(CNC)に電話して、「すみません。デジタルコースに替わりたいのですが…」と尋ねると、「ちょっとお待ちください。お調べします」という返事の後、「お客様、残念ながら、そちらのマンションは対応しておりません。あの、ぜひ理事会の方に、お話をしていただくのが一番いいと思うのですが」と返ってきた。念のため、今回もCNCに電話して、Tのマンションがデジタル対応されているかと尋ねると、「はい。対応しています」ということだった。筆者が寝起きする分譲の賃貸マンションは、築30年くらいたっている。もしかするとそれ以上。建物は堅牢かも知れないが、新しい変化への対応にも、たいへん堅牢な保守性を兼ね備えた皆さんが多く住まわれているのかもしれない。片や、1200世帯が住むTのマンションは、ケーブルもデジタル化対応しており、パワードコムも来ており、USENもやってきた。もしかすると、NTTやKDDIの光も来ているかも知れない。地域間の情報格差も問題だが、光化の格差もそのうち問題になるだろう。待てよ。単純に、「新築のマンションやできるだけ新しいマンションに移らないと、光の恩恵は受けられない」ということなのかもしれない。すぐ隣では、極めて明確に「光の国ニッポン」に向かう動きが進展している。(い)
【目次】
◆1. USENの完全無料パソコンテレビ「GyaO」年末に500万登録達成の勢い
■1週間の平均視聴時間は3時間 ■コンテンツはUSENの調達チームが担当
■USENのブロードバンドコンテンツサービスは
「Gyao」「ShowTime」「BROAD-GATE01」の3層構造
■GATE01の中心ユーザーはヤングファミリー
■テレビとパソコンの棲み分け視聴
■広告費の目安は「ネット以上テレビ以下」 ■2006年8月、1000万登録、売上300億円が目標
■ブロードバンドユーザー2000万にターゲットを集中 ■オリジナリティのあるコンテンツで差別化
◆2. ケーブルウエスト、KDDIとの協業で電話サービスを開始
◆3. ひまわりネットワーク、KDDIとの提携により固定電話サービス開始
◆4. ㈱日本ネットワークサービスがCSデジタル放送、PPVサービスを開始
◆5. JDS、地上光伝送ネットワーク基幹網を利用してJ:COMグループへの配信開始へ
◆6. ㈱i-HITSが㈱ケーブルメディア四国とVODサービス実証実験を開始
◆7. スターキャット、携帯電話向けに番組情報を提供
◆8. WINJが新規BSデジタル放送の免許申請 「TV47 -日本再発見-」
◆9. 「ケ-ブルテレビショ- in KANSAI 2005」 開催
◆10. 英国デジタルテレビ世帯普及率が63%に到達
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