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第272号 「NTT R&D、光の国ニッポン構築にまっしぐら」
[2007.02.28号]
2月24日土曜日。午前中の惰眠を貪っていると、「おばあちゃんが中にいるのよ。おばあちゃんが中にいるのよ」という中年女性の声が窓の外から飛び込んできた。
一瞬<何のことだろう>と思ったが、女性の叫び声は繰り返し繰り返し、聞こえてくる。もしかすると<火事かもしれない>と思う間もなく火災報知器が鳴り出した。
うちのマンションは3号棟。<2号棟が火事なのかな>と思いながら、重い体をフトンから起こそうとしていると、台所の窓から顔を出した家人が「隣が火事!」と叫ぶと、外に出て行った。慌てて、パジャマのまま、同じように台所の窓から顔を出すと、3軒ほど右の窓から煙と炎が吹き出ている。
京葉線の検見川浜駅から歩いて2分ほどのところにあるこのマンションは築30年は経っているだろう。このあたりが埋め立てられてすぐの頃に建てられたようだ。住んでいる人の平均年齢はわりと高い。
4階建てで80世帯ほどを収容する建物が、線路と並行に海側に4棟並んでいる。線路に近い方から1号棟。1つの階段で8世帯が隣組を作っている。うちの部屋は線路に向かって3号棟の左端。その真中あたりの2階の部屋から出火した。火は勢いを増し、黒煙がもうもうと上がり始めた。消防車は、なかなか来ない。近くの美浜消防署は、真っ直ぐな直線道路で、400メートルほどである。
あたりには、野次馬が増え出した。駅前に5年ほど前に建てられた15階建ての大型マンションではベランダの手摺に体を預けて、多くの人が成り行きを見守っている。スタッフのWさんの姿も見える。
やがて、先遣隊の車が到着。出火元を確認している。しかし、放水車はまだ来ない。コートを羽織って階下に降りた。
「煙を吸わないでください。危ないですよ~」と先遣隊の人が声を大きくしている。黒煙がマンションを包み込むようにもうもうと上がり始めた。煙が押し寄せ、口を抑えたが、黒煙が鼻から飛び込んできた。<これは本当に危ない>と思って、火元前から離れた。
3号棟の前には、2号棟の裏庭が広がっている。少しばかり緑があるのだ。しかし、その樹木も煙に巻かれている。その間をかいくぐるように、家人がちょこまかこちらにやって来る。まるで時代劇のくのいちだ。監視カメラで捕らえられたら、あやしい人物を否定できない。二人でいると、近くにいた警察官が近寄ってきて、「ご近所の方ですか?」と尋ねる。
<来た!>と身構えると、家人は、「火元のおばあちゃんは、足が不自由で身動きがとれなかったのだが、無事に保護された」と、掴んできた情報を伝えていた。警察官は、その旨、メモを取っていた。
そのうち消防車が3台ほど現れ、長いホースを引きずりながら、火元の下に行くと、勢いよく放水を始めた。黒煙が、白煙に変わり始めたが、もうもうとした煙の勢いはそのままだ。
傍らでは、携帯電話を片手に、「もしもし。オレ。今、オレのマンション、火事~」と笑いながら話している30歳くらいの男がいる。<不謹慎なヤツだな>と思ったが、もしかしたら、火元の2階の下の部屋か、上の部屋の住人で<笑うしかないのかもしれない>と思った。
携帯電話で写真を撮っている人も何人かいた。本格的なカメラで撮影している人もいる。やがてテレビカメラも登場して、消火作業を撮影している。だいぶ煙の勢いも弱まったので、部屋に戻ることにした。締め切った台所の窓から外を見下ろしていると、火元のおばあちゃんが、ストレッチャーに乗せられて運ばれていく。テレビカメラは、その様子を撮影すると引き上げていった。三々五々、野次馬の数も減っていった。
電話が鳴った。常勤のスタッフで目の前の大型マンションに住むWさんは、早々と「隣が火事ですよ」と電話をくれ、家人が取ったが、今度は、別のスタッフが、出先で「大洋検見川ハイツが火事」と聞いて、電話をくれた。「大丈夫」と伝え、電話を切ったが、また電話が鳴った。<次は誰だろう>と思って受話器を取ると、オリックスの保険の電話セールスだった。火災報知器はまだ鳴っている。「今、隣が火事だから」といって切ろうと思ったが、「大丈夫でしたか?」とまた電話を掛けられるのもイヤなので、2分ほど話を聞いて、「今はいいです」と電話を切った。時計を見ると、12時になろうとしている。出火は、11時くらいだったのだろう。
3時過ぎに、また電話が鳴った。今度は、大家さんだった。「大丈夫でしたか?」ということだったので、「うちは何も影響ありませんでしたから安心してください」といって電話を切った。
今度は、7時過ぎに、ドアのチャイムが鳴った。<新聞の勧誘だろう>と思って、「何でしょう?」と声を出すが返事がない。もう一度、「何でしょう?」と訊くと、「Hですけど…」という声。大家さんだ。「すみません。新聞の勧誘かなと思って」とドアを開けると、「ガスとか大丈夫でしたか?」というので、念のため台所に行って確認して、玄関に戻り、「大丈夫です」と伝えると、「これ少しですがお見舞い…」といって、封筒を手渡そうとする。
そんなことは想定していなかったので、「いえいえそんな…」というが、何となく、遠慮なく頂戴しておかないと、向こうも気がすまないという雰囲気だったので、「すみません。それじゃお言葉に甘えまして、遠慮なく…」と封筒を頂いた。
『近火見舞い』と書かれた封筒には新しい1万円札が入っていた。<これでお酒を買うわけにもいかないし…>と使い道を思案中である。
しかし、土曜日の火事だったのが、不幸中の幸いである。普段の日であったら、みんな出掛けていて、発見も遅れるだろうし、消防署への通報も遅れる。近隣への延焼も考えられる。
夜、家人と「大事な電子データ類は、分散して、Wさんの家にも補完しておいた方が安心だ」とビールを飲みながら話した。今の時代、『地震、カミナリ、火事、おなご』である。(い)
【目次】
◆1.NTT R&Dフォーラム2007開催
●基調講演2 「進化するICTとR&Dの挑戦」
日本電信電話(株)第三部門長 花澤 隆 氏
■ 今年は、何はさておきNGN ■ 情報流通の進展と次の課題
■ 今後の情報流通の4つのポイント ■ 情報過多の時代の課題
■ 情報流通から“知の流通”へ ■ ネットワークの技術の方向観
■ ブロードバンドの視点 ■ 新しい光技術の紹介
◆2.KDDI、「ひかりone TVサービス (MOVIE SPLASH)」がチャンネル大幅増強
◆3.KDDI、放送通信連携型テレビ通販サービスの提供―テレビ通販番組と「au Shopping Mall」が
連携したFMBCの実現に向けたトライアルの実施
◆4.ジャパンケーブルネット、鎌倉ケーブルを傘下に
◆5.視聴者投稿型のコミュニティチャンネル『iTSCOM ch Access』を4月1日より放送開始
―ビデオ投稿作品の一般募集をスタート
◆6.地上デジタル放送推進協会[D-PA]とBSデジタル放送推進協会[BPA]が統合―
新団体デジタル放送推進協会[Dpa]が発足
◆7.CS放送局・キッズステーションで好評放送中の「アニぱら音楽館」―
歴代テーマソングを網羅したオリジナルCDをリリース!
◆8.OKI、三菱電機エンジニアリングと「Com@WILL®アプリケーションパートナプログラム」契約を
締結―IPテレフォニーシステムと受付案内システムを連携―
◆9.マスプロ、デザイン一新で使いやすさを充実! 地上・BS・110°CSディジタルチューナーを
新発売!―アナログテレビでディジタル放送が見られる
◆10.0円・5分(*)でオンラインショップがつくれる―ドロップシッピングサービス「ミセつく」が
グランドオープン
◆11.検索エンジンマーケティングの専門会社シーエーサーチ―誰にとっても快適で使いやすい
サイトに改善する「アクセシビリティ強化サービス」を提供開始
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