cbaニュース
第312号 「IPTV元年の2008年は、ひたすら迷走のまま暮れゆく」
[2008.11.30号]
1週間ほど前のNHKニュース(11月22日かも)で、「群馬県内の振り込め詐欺の7割が、事前に電話を掛けてきて『(携帯電話などの)電話番号が変わった』と伝えていたことが分かった」と報じていた。
栃木県栃木市で起きた「振り込め詐欺未遂事件」も同様の手口であった。
11月28日、お昼の12時少し前に、足利銀行S支店の副支店長(次長かも)から、電話があり、(筆者の母親が)「銀行の窓口に来て、98万3000円の振込みをしようとされていたが、金額が高額なので、振り込め詐欺の疑いがあるので、ご自宅の方にお邪魔して、事情を伺い、確認の電話を入れさせていただいた」ということであった。(振込みをしなければいけないと、銀行の窓口で、慌てる母親をなだめすかし、実家に連れ戻し、落ち着かせて事情を聞いたところで、「息子さんに確認してみましょう」と、栃木の実家から、電話をしてきていたのであろう)
もちろん、振込みを依頼していないので、「振込みの依頼はしていません」と答えた。
「おかあさんと替わりますから」と言って、受話器を母親に渡すと、母親は、開口一番、「ゆうべ、電話を掛けてきたよね」という。
「私は、騙されていない」ということを立証したかったようだ。母親は、76歳になる。
「電話なんてしていない」というと、「ゆうべ、電話してきて、『ケータイの電話番号が変わった』といって、教えてくれたじゃないか」という。「ケータイの電話番号は、(84年10月に独立してすぐに、IDOの広報担当だった知り合いに、携帯電話を用意してもらい、四谷の丸金ビルの事務所で契約手続きをして以来)ずっと、変えていないし、変えるつもりもない」と、少し、強めにいうと、「ひでゆきは、そういう声をしていたのか?」と、少し、覚めてきたようで、母親は、「昨日、電話してきた人とは、違うようです」と、傍らで、様子を窺っていた銀行の方に、伝えた。
銀行の方は、母親が、納得したのを確認して、受話器を再度受け取り、「振り込め詐欺だということがはっきりしましたので、警察の方に、届けさせていただきますので、よろしいですね」という。
無論、拒否する理由もないので、「よろしく、お願いします」といって、受話器を置いた。
しかし、しばらくして、ある疑念が湧いてきた。電話を掛けてきた銀行員は、本当に、足利銀行S支店所属の銀行員であるのか、どうかである。
フレッツホンを利用した「知らせますケン」(松江市に本社のあるメディアトーク社が、普及を図っている双方向告知通信システムで、ブロードバンド環境であればテレビ電話ができる。高齢者の多い自治体型のケーブルテレビなどで導入され、顔の見えるコミュニケーションツールとして、喜ばれている)のようなテレビ電話でないので、顔も見ていなければ、銀行バッチも、社員証もみていない。
こうなってくると、映画「スティング」ではないが、誰を信用したらいいかわからない。確かめる方法は、ただ一つ。足利銀行S支店に電話をして、そういう人がいるかどうか、確認することだ。
電話をすると、「次長は、今、出掛けています」と女性社員が、答えているうちに、「あっ、今、帰って来ましたのでお待ちください」と声を高めた。次長さんは、母親を連れて、銀行に戻ってきた。実家を出る際に、警察に電話をしておいたのだろう。次長さんは、電話を取ると、「今、警察の方がお見えになりましたので、これからお話をうかがいます」と言い、刑事さんに受話器を渡した。
電話を替わり、所属と名前を名乗った刑事さんに、「よろしく、お願いします」というと、早速、「どこかに名前を載せていますか?」と訊くので、「(地元の)栃木高校の卒業者名簿に、載せています」と答えた。
刑事さんは、「ああ、そういうところで、調べているかもしれませんね」と答えた。
今度は、こっちが尋ねる番である。「2週間ほど前、振り込め詐欺撲滅の歌を作って発表していましたよね」と尋ねると、〈おっ、ニュースを見ていてくれたのか〉という調子で、「そうなんです」と答えた。
2週間ほど前、TBSニュースバードを見ていると、「栃木署が、振り込め詐欺撲滅の歌を作った」とその披露の模様を紹介していたのである。
なぜ、その質問をしたかというと、詐欺グループが、そのニュースを見ていたら、栃木署のエリアを集中的にターゲットにするのではないかと、ずっと考えていたからだ。彼らは、プロだから、「そこを出し抜いてやる」という気持になるだろう。
彼らは、自分たちに関連するニュースを逐一見ていると思う。どの放送局が、どんなニュースを流していたか、どの新聞、どの雑誌が、どんな記事を載せているのか、たいへんに気になるはずである。
そして、テレビは、地上放送にとどまらない。CS放送も見ているはずである。お近くのケーブルテレビなのか、あるいは、スカパー!なのか、あるいは、オプティキャストのスカパー!光なのか、NTTぷららのひかりTVなのか。
ここまでいうとみんな載せないと不公平だから、「BBケーブルかもしれないし、ひかりone TVかもしれない」と付け加えておこう。あとは、PCで、見ているかもしれない。
ケータイでの映像視聴はやらないだろう。契約者が、特定されるから。
もしかすると、地元にあまり、執着性のない、スカパー!かもしれない。ケーブルテレビでは、いろいろと顔がばれる可能性がある。しかし、いずれにしろ、多チャンネルを視聴していると思う。もちろん、上の方だけだろうが。
刑事さんには、「ケーブルテレビのコミュニティ放送で、注意を呼びかけてもらった方がいいですよ」と伝えた。刑事さんは、「ケーブルテレビさんには、いつもご協力いただいています」といっていた。
詐欺グループの一員が「事前の電話」を掛けてきたのが、27日夜。筆者は、日付が変わって、寝酒をして、3時の新聞屋さんの宅配を確認した頃に、眠りについた。その後、記憶に全然ないのだが、明け方、がばっと目を覚まし、家人を起して、「明日の朝、起きたら、栃木にすぐに電話をしてくれ」といって、また、眠りについたそうである。
家人は、翌朝10時頃に、栃木に電話をし、「変わりがないか」と口火を切るが、昨夜、風邪を引いたといって、ゴホゴホいいながら、電話を掛けてきた詐欺グループの一員をすっかり息子と思い込んでいる母親は、「二人で風邪を引いていちゃ、しょうがないから、気をつけるように」といって、電話を切ったそうである。
家人が、「二人とも風邪なんて引いていない」といっても、少し耳の遠くなっている母親には、届かなかった。
昨夜の電話が、振り込め詐欺の仕込みの電話とは、母親も思っていないし、家人もまさか振り込め詐欺の仕込みの電話が掛かってきているとは思わないから、家人も〈何か、変だな〉で終わっている。
そこに、28日午前中の11時頃、家人が電話を掛けて小一時間ほどした頃に、詐欺グループから電話が掛かってきた。
2日ほどして、母親からその後の様子などを聞こうと電話すると、まだその時の話をしたがり、仕込みの事前電話を掛けてきた男と母親は、30分以上の会話をし、最近の様子など、事細かな事情を全部話したそうである。詐欺グループにとっては、たいへんありがたい情報提供者である。
振込み依頼の話の内容は、だいたい以下のようなものだった。
「アルバイトで、家電商品を販売することを始めた。今日、急にその会社の監査が入ることになった。販売先からのお金の回収がまだで、穴を開けると面倒なことになるので、98万を振り込んでくれ」という相変わらずの「ゴホゴホ電話」が掛かってきたのだという。
母親は、その電話に、開口一番、「病院に行けといったのに、まだ行ってないのか」と叱っている。
13時までに、振込みをしてくれといわれた母親は、「98万でいいのか?」と確認すると、男は、「じゃあ、98万3000円」といったそうである。
まさかとは思うが、その「3000円」のみが、男の手元に残るお金だったりして……。
銀行での事情聴取を終えた母親は、警察の車で、家に帰ってきたのだろう。
約束の13時までの振込みは、なされていない。
13時半ごろ、再び家の電話がなった。先ほどの男からの電話で、「振り込んでくれたか?」と聞かれた母親は、「銀行の人が振り込んでくれなかった」といったようだ。そこで、身内のものになりすました刑事さんが、電話を取り、のらりくらりと、「直接手渡すから、取りに来い」というような話を繰り返し、これ以上らちがあかなくなった段階で、「警察だ!」というと、電話は切れたそうである。
その後、実家は、警察の見回りルートに入り、世話になった刑事さんが、たまに顔を出してくれている。
あれ以来、実家に電話を掛ける時、声だけだと、母親が、なかなか信用しないので、テレビ電話を入れた方がいいかもしれないと、NTT東日本のサイトで、電話番号を入力して、FTTHの環境を確認したが、実家のあたりは、「△」になっていた。
あとから、母親が、近所の人や、友人に聞くと、みんな一度や二度は、掛かってきているのだそうだ。
コミュニケーション不足と情を突かれた。(い)
【目次】
◆1.「Inter BEE 2008」開催 ――『IPTV Summit』にも人気集まる
◆2.「総務省テレビ受信者支援センター」が業務を開始
―地域における地上デジタル放送に関する受信相談体制を整備
◆3.優れたECショップ・ECサイトを表彰する「第12回日本オンラインショッピング大賞」
――『ハンコヤドットコム』などが受賞
◆4.高知ケーブルテレビ株式会社がJC-data を利用したデータ放送サービス開始!
◆5.デジタル放送サービスがさらに充実! iTSCOM TVに5つのチャンネルが新登場
~特別企画 「オペラ映画フェスティバル上映会」ご招待キャンペーン等を実施~
◆6.AmebaStudio(アメスタ)がYouTubeにブランドチャンネルを開設
◆7.サイバー・バズ運営のPC・モバイルメディア対応動画シーディングサービス「Bzzool(バズール)」
が、のべ6,000万UUを突破
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