cbaニュース
第324号 「地デジ移行に向けて各地で様々な取り組みが進展」
[2009.06.01号]
4月29日、ひえづワンセグの取材を終えて、地元の方の車で境港まで送っていただいた。車の向かう先に、島のような山が現れる。米子空港からまっすぐ東京に戻る同乗のS氏は、「何あれ?」と尋ねる。車を運転している地元のT氏は、「島根半島。その間に境水道があって、それを上っていくと、中海(なかうみ)。それをもっとずっと行くと、宍道湖(しんじこ)」と当たり前のように説明した。山のように見えた島根半島は、それこそ高みを越えた向こう側から、何か妖怪が現れでそうな雰囲気で、日本海との間に横たわっていた。右に頭を振ると、美保湾が広がっていた。島根半島の先端の町、美保関町は、今は、松江市美保関町になっており、山陰ケーブルビジョンのエリアになっている。
境港の駅前で降ろしてもらい、小さな駅の構内の貸しロッカーに、取材道具が入ったキャリーバック、お土産でいただいたお菓子(これがたいへんおいしかった)の入った丈夫な紙袋をしまいこんだ。ここからは、羽を伸ばして観光旅行である。
駅前には、執筆中の水木しげる氏を彫り上げたブロンズ像が飾られている。祝日の3時過ぎ。好天気に恵まれ、のんびりとした雰囲気が漂う。老若男女のカップルから、子供を連れた家族連れ、親子連れ、父子(たち)、母子(たち)、年配の女性のグループ、若い女性のグループといろいろな人たちが、駅前から水木しげるロードに向かって歩いていき、そして返ってくる。男同士は、まあ、見当たらない。男一人は、たいていカメラ片手で、あっちこっちにカメラを向けては、シャッターを切っている。筆者も、その一人というわけだが。
しばらく行くと、河童の泉という公園で、紙芝居をしていた。子供たちやその親が回りに集まり、話に聞きいっている。懐かしい風景である。後に、NHKの番組で、「水木しげる先生の最初の活動が紙芝居だったということで、市の若い職員が紙芝居に取り組んだ」と紹介していた。
道路の両側には、ゲゲゲの鬼太郎にちなんだ様々な商品が売られている。そのいちいちに顔を突っ込んで、のぞいていると、それこそ日が暮れてしまうし、いろいろなものを買い込んでしまうので、楽しげな子供たちの表情を間に、店の中の様子をうかがっては、次の店へ、次の店へと、渡り歩いた。
床屋の入り口にも、鬼太郎の絵が描いてあり、それこそ「鬼太郎カット」があるのではと思ったが、のぞいてみることはしなかった。
水木しげるロードの一番奥には、水木しげる記念館がある。ここも、入ってしまうと、なかなか出てこられなくなりそうなので、次回来るときの楽しみにとっておくことにした。
ロードを一歩通り越すと、さびれた町並みになる。客がいるのかどうか、というより、やっているのかどうか外からではわからないパチンコ店もあった。朽ち果てた看板のひとつひとつに、昔は、相当はやっていたのであろうと想像できる商店街の名残もある。今はもう、観光客は誰も足を踏み入れない感じだ。地元を離れて遠くに住んでいるものが、たまにふるさとを訪れ、足を踏み入れ、遠い昔の記憶に思いをはせるのだろう。
この水木しげるロードができるまでは、境港の駅前の商店街は、さびれる一方だったのだ、ということが容易に想像できる。
4月22日、NHKは、2010年のNHKの朝の連続テレビ小説は、水木しげる氏の妻・武良布枝さんの自伝を原案にした「ゲゲゲの女房」に決まったと発表した。おそらく、今年の夏休みあたりから、この話題が広がり、境港、そして、この水木しげるロードを訪れる観光客の数もこれまで以上に増加するだろう。
しかし、このロードを越えて、こちら側に足を踏み入れる人は、それほどはいないだろう。でも、こちら側には、境港の往時をしのばせる人々の生活の名残がそのままある。それは、水木しげる氏が、育った時代へと、そしてもっと昔の時代へと繋がる空間であろう。そうした昔からの連綿とした空間のつながりを将来に向かって伝えていく、というこの地域の人々の思いが、水木しげるロードとして結実しているのではなかろうか、と青い空の下で思った。ふっと、路地を曲がったあたりに本物の妖怪が隠れているような、そんな気がして、水木しげるロードに戻った。
列車の時間を気にしながらも、なんだかんだと遠目から店をのぞき、それぞれの店の前に飾られている妖怪のブロンズ像を確認しながら駅への道を急ぐ。後ろから、人力車がやってきた。母と小学校3年生くらいの娘が乗っている。人力を引っ張る70歳に近いと思われるおじいさんは手馴れた様子で車を引き、それぞれの妖怪のブロンズ像の前で止まっては、その妖怪の特長を娘に語って聞かせる。そのおじいさんの方が妖怪なのではないかと思わせるほど、もはや雰囲気が漂っている。
帰りに紙芝居を見てみようと思っていたが、すでに引き上げた後だった。と、ケータイを片手にした20代半ばの女性が、嬌声を上げながら仲間の2人の女性の方に駆け寄ってきて、「ど~う?ど~う?」と詰め寄る友人たちに、「けっこうリアル~」と答えていた。
〈何が、けっこうリアルなんだろう?〉と彼女が駆けてきた方に行ってみると、河童の泉に向かって、ちゃんちゃんこを着た鬼太郎が、気持ちよさそうに弧を描いていた。虹はなかった。(い)
【目次】
◆1.長崎ケーブルメディアのデジタル移行への取り組み
◆2.「アナログ放送終了リハーサル」実施のための拠点設置
~珠洲市に「デジサポ珠洲」を設置~
◆3.「アナログ放送終了リハーサル」におけるアナログ放送の一時休止日時の決定
―石川県の珠洲中継局で7月24日午前に1時間休止―
◆4.受信障害対策共聴施設及び集合住宅共聴施設のデジタル化対応状況
◆5.2009年4月末 J:COM総加入世帯数は319万8,400世帯
- デジタルサービス加入率は83% -
◆6.イッツコムがVODサービス「イッツコム オンデマンド(仮称)」を年内開始
~J:COMのプラットフォームを採用 NHKオンデマンドにも対応予定~
◆7.地域の子供たちとデジタルコンテンツを制作・全国に情報発信!
情報通信月間参加行事「須高情報通信フェア2009 ICTデジタルワークショップ」開催
◆8.おりべネットワーク、KDDIとの提携により固定電話サービス開始
◆9.高岡ケーブルネットワーク、KDDIとの提携により固定電話サービス開始
◆10.浜松ケーブルテレビ、KDDIとの提携により固定電話サービス開始
◆11.NHK放送研修センターセミナー
次号へ | cbaニュース一覧 | 前号へ |