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第326号 「インタラクティブ・マルチコンテンツ、マルチ端末は当たり前」
[2009.07.17号]
新八代で九州新幹線つばめに乗り換えると、まもなく列車は、ホームを滑り出した。どんな風景が見られるのだろうかと、期待に胸が膨らんだ。しかし、ほどなくトンネルに入り、その後、まるで、木造家屋の長い廊下に立てられた雨戸の、少しずつ開いた隙間から外が垣間見える、というような状況がこれでもか、これでもか、と続く。〈せっかく期待した風景は、まったく見られないと〉不満をメールに綴り、「送信」を押してもまるっきり通じない。あきらめて、目を閉じているうちに、さっさと鹿児島中央駅に着いてしまった。ビジネスは早くなるだろうが、観光の風情はやはり在来線だろう。
鹿児島中央駅は、10年以上前に一度来たことがあるが、駅前はすっかり様子が変わっていた。AMUE(アミュー)という駅ビルには、大きな観覧車が出来ていた。周囲を一望できるのだろうが、狭くて高いところは好きではない。それに、今年の夏の暑さを先取りしたように暑かった。鹿児島中央から、宮崎に向かう特急の発車時間までには、1時間ほど間があったが、駅を出て駅前の広場を一回りして、さっさとホームに下りて、日陰で、ボーッとして過ごすことにした。
在来線の改札の左側の壁面に、デジタルサイネージのディスプレイが掲示されており、次から次へと静止画映像のコマーシャルが映し出されていた。20秒、3分くらいの繰り返しだ。
人通りの多いところだから効果は期待できるだろう。待ち合わせで、長いすに腰を掛けたり、立って待っている人も多い。そのディスプレイをカメラに収めた。「いったい何を撮っているのだろう?」と怪訝そうな視線を2つ、3つ感じた。
ホームは、たいへんのんびりしていた。特急の到着を待つ、掃除のおばさんやおじさんたちものんびりしていた。全国共通の自動販売機の中から、地元の水を選んで、喉を潤す。ほどなく特急が滑り込んできた。嫁に行った娘の所に久しぶりにやってきた感じの70前のおばさんが、ホームのいすから立ち上がり、あたふたと荷物を抱えて入り口に向かおうとする。掃除があるから、まだ大丈夫だと、娘が諭す。それでも心配そうな母親。
ホームで、のんびりと列車の到着を待っていた掃除のおばさんやおじさんは、テキパキと体を動かして、お客さんを迎え入れる準備を進めている。〈暑いから、もう適当でいいから、車内に入れてくれ〉と思うが、そうはいかない。さっきまでとは見違えるように、真剣な表情だ。「適当」という漢字二文字は、彼らの辞書にはない。いいかげんにしていると、職を失ってしまうのかもしれないが。
ようやく掃除が終了し、発車10分ほど前に、出入り口を塞いでいた鎖が外された。「ここは、自由席ですかね」と先ほどのおばさんが、誰に言うとでもなく口にしながら、ホームの娘を見られる右側の列の窓際に腰を降ろす。
金曜日のお昼前の列車。人はそれほど乗っていない。進行方向に向かって、左側の列の窓側に座った。
右側は海。左側に座って、車窓から家屋の屋根のアンテナチェックを試みようと思った。ここから先、霧島市隼人町には、南九州ケーブルテレビネットがある。その先の沿線には、都城市(ビィーティーヴィーケーブルテレビ)があり、清武町、宮崎市(宮崎ケーブルテレビ)がある。昔の記憶によれば、日豊本線はだいぶ山深いところを通っていた。
キラキラと輝く鹿児島湾の向こうには、堂々とした桜島がある。昨年の大河ドラマを思い出してしまう。が、宮崎あおいは思い出せたが、ドラマのタイトルが出てこず、あとでネットで調べることになった。なさけない記憶である。最近、つとにそうである。
そうこうしているうちにアンテナの数が少なくなって、ケーブルテレビの伝送路のようなものが見えてきた。隼人である。試験でもあって、早じまいなのであろうか、高校生の男女がホームで次の各駅停車の列車を待っている。
地方に出て、若い高校生を見る機会が多いのは、断然、駅のホームである。駅のホームだけを見ていると、それなりに「数」がいて、あまり少子化という印象を受けないのであるが、地方の私立高校の関係者や大学、専門学校関係者の話を聞くと、高度成長時代の労働力として、金の卵といわれた地方の中学卒業生よりも、現在、その価値は高いという。
いずれにしても、それなりの「ボリューム」がなければ、学校経営は、やっていけない。公立の高校は、それなりに統廃合が進むのであろうが、私立になると、幼稚園や短大、4大を抱えている学校法人も多い。今後を考えると、厳しい経営選択を迫られるのは目に見えている。
国内である程度のシェアを確保して、その利益を海外に投資するというキリン、サントリーの経営統合案が検討課題に上る国内の市場状況である。教育という市場の中でも、それぞれの地域で、「バリュー」のあるところへ、「ボリューム」が集中する、というような展開になるのであろうか。それとも、教育は「聖域」でいられるのであろうか。
深い山を抜けると、都城盆地の町並みが広がっていた。ここは、昔、薩摩藩だったということで、薩摩の文化が色濃く残っているといわれる。
地方に出ると、江戸時代の藩の名前が会話に出てくることが多い。その度に、江戸は決して遠い昔ではない、と思う。(い)
【目次】
◆1.モバイルWiMAX、デジタルサイネージ、動画配信
―「Interop Tokyo 2009」「IMC Tokyo 2009」「DSJ 2009」開催
◆2.J:COM オン デマンドの「フジテレビ On Demand」
フジテレビで現在放送中の人気番組の見逃し視聴を開始
◆3. J:COMの販売戦略、マーケティング戦略、商品戦略について
◆4.JC-HITS、HD 配信および地上伝送を本格稼働
◆5.長野県高山村、女子美術大学、須高ケーブルテレビの産学官連携事業
「りんごアートコンテスト2009」を開催!
◆6.『スペインサッカー リーガ・エスパニョーラ』
09-10シーズン全テレビ独占放送権獲得
◆7.デジタルシネマ配信サービス「PURE CINEMA」初回配信について
~国内初商用サービスによる話題作「ノウイング」のネットワーク配信~
◆8.ファーウェイ・ジャパン、加賀電子との販売代理店契約を締結
通信モジュールの分野において、新規顧客の開拓を目指す
◆9.「メディア・ソフトの制作及び流通の実態」に関する調査結果の公表
~日本のメディア・ソフト市場規模(2007年)は11.4兆円。
ネットワークでの流通が1兆円規模に成長~
◆10.~灼熱の夏のプロローグ ケーブルテレビで生中継~
JCNケーブルテレビ東京5局が同時生中継を実施
『第91回全国高等学校野球選手権大会 西東京大会』
◆11.「2009 Jリーグヤマザキナビスコカップ 準準決勝」
JCNグループケーブルテレビ局が生放送
◆12.NHK放送研修センター「平成21年度ケーブルテレビ研修」案内
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