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第492号「オリンピックイヤーに、テレビ、ネットは、どう変貌するのか」
◆1.INTX2016視察報告《フォトレポート》
-複占で「コムキャストショー」化が進展
◆2.NHK技研公開2016《フォトレポート》
-そこまでやってきた8K放送
◆3.世界初!ケーブルテレビ商用回線でMMT-TLV方式の衛星8K放送の伝送に成功
~4K・8K衛星放送のケーブルテレビ再放送実現に向け伝送方式の共同評価も開始~
【よいどれコラム】
ボストン、NY、フィラデルフィアの東部3都市を巡るINTX2016視察ツアーを終えて、成田に到着したのは、5月22日。例年、翌日から、報告書づくりに取り掛かるが、今年は、さらに国内のワンフライトが待っていた。現地時間の16日、ボストンの会場で、ある方と二言三言言葉を交わすと、「大分ケーブルテレコムのジュピターテレコムの傘下入り」の記者発表が、来週(23日の週)に行われるという情報が入ってきた。週の後半であればいいな、と思っていたが、翌日の早朝、知り合いから電話が入り、23日に、大分で記者発表が行われるという連絡だった。航空券を購入する専用のカードを持参していなかったので、帰ってから飛行機の予約をすることにした。(帰国してからメールを開くと、日本時間の17日に、5月23日の記者発表の案内が届いていた)大分ケーブルテレコムならびに佐藤英生社長とのお付き合いは長い。同社が、設立されて28年。事業を開始して25年になる。事業を開始する前に、熱心な代理店営業を行い、事業を開始する時には、1万件を超える予約数があった。1万件の加入予約は、業界初のことだったので、当時、筆者が所属していた月刊ニューメディアで、松下電器産業の協賛のもと、特集記事を組んだ。その取材を行ったのが、つい昨日のことのようにも思える。
1万件の加入予約が、どういうことを意味するかというと、年間3万~6万くらいの利用料金を払ってくれるお客さんが、最初から、1万以上いるから、年間売上が、初年度から、(実際にいくらだったかは知りませんが)3~6億円を見込めるということだ。加入が減らなければ、この積み上げがどんどん膨らんでいく。ケーブルテレビのキャッシュフロービジネスの本質だ。それでも、設備産業だから、定期的に、伝送路の改修を行ったり、センター設備の入れ替えを行ったり、家庭に設置するSTBの入れ替えを行ったりと、事業を円滑に運営するためのメンテナンスには、多額の投資を必要とする。その投資に必要なお金を蓄財しておくのも、また大切なことだ。当初から、加入が1万を超えると、なにかと後の金の工面が楽になる。23日の佐藤社長との立ち話でも、「借金は、最大でも3億円くらいだった」といっていた。
17期連続で、二桁成長。その後、成長率が、鈍化したといっても、売上は伸び続け、同社単体だけでも80億、やがて100億の売上が見えてきているこの段階で、『なぜ、ジュピターテレコムの傘下に?』というのが、大方の疑問である。佐藤社長は、「3年、5年という短期であれば、100億を目指して会社を切り盛りしていくことができる。しかし、今のうちの社員の平均年齢は、約31歳。この人たちが最後まで、この会社で働くことができるということを考えると、私には、その責任をまっとうできない。そうであるのなら、今、まだ成長している段階で、ジェイコムさんにお世話になるのが、一番いいだろうと考えた。2~3年経って、成長率が鈍化してから、あるいは、業績が下がり始めてからでは、ジェイコムさんも、お話にのってくれるかどうかわからないし、一番に、そうなってからでは社員の気持ちに、そして彼らの人生に傷をつけてしまうことになる。そう思うと、今、私が、我をすてて、去るのが一番いい選択肢だと、そういう結論に達しました」という。
大分ケーブルテレコムのサービスエリアは、大分市内のほぼ全域および大分県内の18市町村のうち11の市と町のケーブルテレビ事業の業務支援(伝送路の保守、制作支援、技術者の常駐、電話、課金)を行っており、地域の繁栄と存続を考慮した時に、絶対につぶれてはいけない会社になっていることも、ジェイコムの傘下に入り、将来にわたっての経営基盤の強化に踏み切らせた一因だ。
一般報道陣に対しての記者会見後に、佐藤英生社長、森淳一専務取締役とケーブル記者会メンバーとの会見の席が設けられ、森専務から、次のような話があった。
「FTTH化も完成しましたが、今後、その上で動くアプリケーションの開発などは、私ども単独ではとてもできない。そういったことからもジェイコムさんのお力を借りて(ということになった)」
なるほど、世界のケーブル業界は、単純に「多チャンネルをテレビやスマホ、タブレットに配信するレベルから、インターネットを活用したアプリケーション競争の段階」に入っている。
そういう意味でいうと、今回の「大分ケーブルテレコムのジェイコム傘下入り」は、米国で行われているチャーターのタイムワーナーケーブル、ブライトハウスネットワークの買収と同質のものだろうと思った。
新社長に就任予定の中谷博之氏は、記者会見の冒頭、「今回の件は、ジェイコムから話を仕掛けたわけではありません。私どもは、相談を受けて、今日に至ったわけでして」と話していたが、いずれにしろ、ケーブルテレビ業界は、インターネット+TVを活用して、新しい顧客満足度の高い商品を出して、他社サービスと競争、あるいは連携する局面を迎えている。(い)
【目 次】
◆1.INTX2016視察報告《フォトレポート》
-複占で「コムキャストショー」化が進展
◆2.NHK技研公開2016《フォトレポート》
-そこまでやってきた8K放送
◆3.世界初!ケーブルテレビ商用回線でMMT-TLV方式の衛星8K放送の伝送に成功
~4K・8K衛星放送のケーブルテレビ再放送実現に向け伝送方式の共同評価も開始~
◆4.ジュピターテレコム、大分ケーブルテレコムの経営権を取得し連結子会社化
◆5.大分ケーブルテレコム、株式の一部譲渡に関するお知らせ
◆6.富山県にて、「JC-Smart」を活用した防災・観光アプリ「富山なび」
の実証実験を開始
◆7.NTTぷらら、北海道ローカルバラエティ番組
「タカトシ牧場~沖縄旅行スペシャル~」を4K作品として独占先行提供
◆8.NTTぷらら、外出先でも、野球中継やお笑いライブがリアルタイムで楽しめる!
-スマホやタブレットで視聴できるインターネット配信チャンネル決定
◆9.キッズステーション 番組案内
◆10.NHK放送研修センター《ケーブルテレビ研修》案内
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